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“五つ星の攻撃陣”はCL優勝仕様。
守備の権化・ユーベが選んだ道。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/02/09 07:00
5人のスターを並べる超攻撃型布陣に舵を切ったユーベ。デル ピエロ、コンテらを擁した1995-96シーズン以来のビッグイヤーを狙う。
「批判の数でスクデットが決まるなら、優勝も同然」
これまでも「アウェーゲームに弱い」「中盤が脆い」という批判を受けていたが、昨年クリスマス前には中東ドーハで開催されたイタリア・スーパー杯でミラン相手にPK戦の末に敗れて、その拍車がかかった。
前後半の90分間、そしてPK戦でも一度はリードしながら、追いつかれてしまう展開となった。ピッチに立った選手たちの甘さを指揮官は許せなかった。
普段はクールなイタリアン・ダンディを装うアッレグリが怒りを露わにするのは、タイトルのかかった試合に選手たちが死力を尽くさなかったときだ。試合終了直後には「あいつら全員、ケツを蹴っ飛ばしてやる!」と毒づく姿をTVカメラに捉えられていた。
ミラン戦、フィオレンティーナ戦と年をまたいでの2敗によって、ユーベは猛批判に晒された。アッレグリは「批判の数でスクデットが決まるなら、うちはもう優勝したも同然」と、うんざり顔でボヤいた。
アッレグリがベッドで目覚めて閃いた「4-2-3-1」。
スクデット連覇だけを考えれば、選手たちに少々お灸をすえながら戦力差のある2位以下との差をキープしつつ、後半戦を乗り切ることは可能だろう。
しかし、CLで要求されるのは別次元の戦いだ。今季ファイナルが開催されるカーディフにたどり着くには、チーム全体に強い危機感と緊張を呼び起こす必要がある。先発メンバーを少々いじる程度では、選手たちの心に潜む慢心の芽を摘むことはできない。
「何かを変えるなら今しかない」と決断したのは、フィレンツェでの敗戦から3日後の朝、アッレグリがベッドで目覚めたときだ。
閃いたのは4-2-3-1だった。
10人のフィールドプレーヤーのうち半分を攻撃の選手に任せるのは、守備の国イタリアでは机上の空論どころか無謀に近い。しかし、策士アッレグリはベッドで少し考えを巡らせて「いける」と直感した。