Jをめぐる冒険BACK NUMBER
レアル相手に「2位も最下位も一緒」。
あの30分が、鹿島をさらに強くする。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/12/19 15:30
いいストライカーがいいDFを育てるのだとすれば、ロナウド、ベンゼマとマッチアップする以上に貴重な経験などありえない。
レアルとの延長戦30分は、何物にも代えられない財産。
今の鹿島の、特に20代前半の選手たちにとっても、チャンピオンシップの3試合とクラブワールドカップの4試合、もっと言えば、決勝におけるエクストラの30分間ですら、今後のキャリアにおいて何物にも代えられない財産になるはずだ。
もっとも、それは振り返ったときに気づけばいい話で、今の鹿島の選手たちには、レアル・マドリーと好勝負を演じたことへの満足感もなければ、充実感もなかった。あるのは、目の前にあるタイトルを獲れなかったことへの悔恨だけだった。
「結果を求めていたので勝てなくて残念。来年はACLを勝ち抜いてアジア王者としてこの舞台に立って、チャンピオンを取れるように頑張りたいと思う」
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キャプテンの小笠原満男が言えば、昌子源が続ける。
「うちのキャプテンが『2位も最下位も一緒』とよく言うけれど、その意味がよく分かった。優勝して初めて成長したなとか、良いディフェンスだったなと言われる資格が生まれると思う。次に向けて頑張りたい」
思えばCS優勝直後も、意識は「次」だった。
鹿島にとっての次――それは、天皇杯にほかならない。
浦和とのチャンピオンシップ決勝が終わった直後、クラブワールドカップの初戦を戦うために横浜に移動したあと、土居聖真はこんなことを言っていた。
「『チャンピオンシップが終わったばかりなのにクラブワールドカップがあって大変ですね』って言われるんですけど、全然。むしろ、クラブワールドカップがあって良かった、天皇杯に勝ち残っていて良かったって思いますね。次のタイトル獲得のチャンスがすぐにある。それにチャレンジできるのは、幸せだなって。満男さんが『次も、次も』って言う気持ちが、今は本当によく分かります」