沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
芸術的な共同作業でJC完全勝利。
武豊+キタサンに漂ってきた無敵感。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2016/11/28 12:00
昨年のGI初戴冠から、キタサンブラックは北島三郎オーナーに喜びをもたらし続けている。このまま日本初の凱旋門賞、なんてことも……?
武豊が北島三郎に「快気祝いにしましょう」。
今回は逃げたが、前走の京都大賞典のように控えても強さは変わらない。苦手と思われていた東京で強敵を完封した今、この馬は無敵になったと言っても大げさではないのかもしれない。
天皇賞・春につづく、今年のGI2勝目。まだビッグレースはつづくが、現時点で年度代表馬の最有力候補となった。
北島オーナーは、実は体調があまりよくなかったという。
「私は何もしていないのに、かわいい子供が自分で強くなってくれました。キタサンブラックには、本当にありがとうと言いたい。私は9月12日に頸椎を手術しまして、(武)豊さんが『勝って快気祝いにしましょう』と言ってくれていたんです。きょう、それを実行してくれたので、明日から元気になれそうな気がします」
次は有馬、来年は海外挑戦も?
これで武はジャパンカップ単独トップの4勝目となった。
エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップと2週つづけて有力馬が走行妨害を受けて後味の悪さが残ってしまったが、日本を代表する名手が、これ以上ない綺麗なレースでスカッと勝ち、モヤモヤしたものを吹き飛ばしてくれた。このレースなら、世界中にリプレイ映像が発信されても、「どうだ、日本の競馬はすごいだろう」と胸を張れる。
キタサンブラックの次走は有馬記念になる模様。武は言う。
「きょうはこれまで乗ったなかで一番強いパフォーマンスだった。ぼくのなかでも大きな存在の馬です。締めくくりを勝つことがどれだけ重要かを感じています。それに向けて頑張ります」
会見では、外国メディアから、来年海外遠征してドバイシーマクラシックや凱旋門賞に挑戦するプランはあるのかと質問が出た。
すでにオーナーは退席していたが、清水調教師は「関心は大いにあります」と答え、武も「きょうの勝ちっぷりなら、当然意識してしまいます。北島オーナーならちゃんと乗せてくれると思うので、安心して(海外に行きましょうと)言えますよね」と笑わせた。
存在自体が、「北島三郎」と「武豊」というビッグスターを結びつけるキタサンブラックが、ワールドクラスの強さであることを自身の走りで証明した。またひとつ、私たちもともに追いかけることのできる、大きな夢ができた。