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「20分くらいなら行ける。ただ……」
内田篤人、復帰目前の今を楽しんで。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/11/14 07:00
チームが勝利するため、最善を尽くす。鹿島でも、日本代表でも貫いたシンプルな信念を内に秘め、内田はシャルケで戦線復帰の時が近づいている。
「どこかで90分行けるタイミングが出てくるか」
「ベンチ外の方がいい」というのは、内田なりの心づかいを込めた言い回しだ。貴重な交代枠をサイドバックの選手のために、怪我から復帰した選手を慣れさせるために、使わせてしまうのは申し訳ない。認められている3人の交代枠は勝ち越しや同点を狙うための攻撃陣のために、あるいは1点リードの場面でロングボールを跳ね返す屈強なセンターバックの選手のために、残しておくべきだと考えるからだ。
大切なのはチームが勝つこと。どんなに大きな怪我を負っても、その考えは変わらない。
「もちろん、いきなり『90分、試合に出ろ』とは言われないだろうし、(スタメンで出て)途中まで、とかになるだろうね。今は、『10分や20分くらいやれ』と言われたら、もう行けるもん。ただ、どこかで90分いけるタイミングが出てくるか。それがすごく大事」
「我々は(内田の復帰については)慎重だ」
そう語るのは、昨季終了後にハイデルGMの右腕として、ともにマインツからシャルケへと移ってきたシュスターSD(スポーツ・ディレクター)である。同氏は内田の復帰を信じて、サポートしてきた人物である。
EL最終戦、もしくは11月24日の復帰もあり得る。
彼は、今年の9月の時点で、ある“夢”を抱いていたという。
「私は完全な楽観主義者であるから、(9月の時点で)内田をヨーロッパリーグの登録メンバーに入れておいたのさ。当時はこう考えていたんだ。(ELグループステージ最終戦である)12月8日のザルツブルクとの試合にはグループ突破を決めているだろうし、そうなれば内田もそこでプレーできるんじゃないか、とね」
その“夢”が実現したとしても決して不思議ではない。
シャルケはグループステージを2試合残した現在、すでにグループ1位での突破を決めている。残り2試合は、完全なる消化試合だ。だが、それは内田にとっては貴重な実戦機会となる。
12月8日のアウェーのザルツブルク戦ではなく、11月24日に組まれているホームのニース戦での復帰の可能性すらある。