炎の一筆入魂BACK NUMBER
黒田博樹に繋げなかった空虚感。
動くリスクを怖れた広島の「型通り」。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/11/01 11:25
優勝を逃した直後、緒方監督は「来年は来年で新しいチームになってスタートだ。戦力も新しい顔ぶれがある」と前向きな発言でチームを鼓舞した。
「型があるから、型破り。型がなければ、型無し」
故中村勘三郎は言った。「型があるから、型破り。型がなければ、形無し」と――。
日本ハム栗山監督の采配はまさに型破りだった。
長丁場のペナントレースとは違う、短期決戦で勝つための采配だった。
シーズンとは違うオーダーを試しながら、第5戦では先発の加藤貴之を2回途中でも代えた。第6戦も大谷を温存。生き物のように動く短期決戦の流れを自ら動いてつかみ、低空飛行だったチームを日本一に上昇させた。
一方、広島は「型」にこだわった。
「自分たちの野球」を貫いた型通りの戦いは、動くリスク回避のようにも映った。力がほぼ互角の相手との短期決戦は、勢いだけでは勝ち抜けない。短期決戦の難しさ、そして厳しさを痛感させられた。
32年ぶりの日本一を逃した喪失感は来年、33年ぶりに取り返すしかない。