Jをめぐる冒険BACK NUMBER
大久保、憲剛の「代役」ではなく――。
川崎・小林悠、三好が見せた自分の色。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2016/09/28 11:00
小林はこの日の決勝弾で大久保と並ぶ今季リーグ戦15得点目をマーク。得点ランク1位のピーター・ウタカとは3点差と得点王も射程圏内だ。
ボランチで出場した憲剛も三好に“注文”をつけた。
「本当に、さんざん荒らしてくれたなっていう。点を取ったのは素晴らしかったですけど、そのあと若さが出てしまいましたね」
そう苦笑した小林は、ミスのシーンについて言及した。
「蹴ってもいい。ああいう時間帯でのバックパスや横パスは……」
そこでいったん言葉を飲み込むと、こう続けた。
「まあ、でも分かります。自分もそういう経験をしてきましたし、それが、たまたま負けになるか、勝ちになるかっていう差だと思うんですけど、ああいう経験が選手をすごく成長させると思うので、この結果でチームがまた強くなれればいいと思います」
今や日本代表の一員である小林にも若い頃にはチームを敗戦に追い込みかねないミスを犯したり、消極的なプレーでチャンスをフイにしたりした苦い思い出がある。
もちろん、小林だけではない。中村にも、エースとして君臨したジュニーニョから厳しい言葉をぶつけられ、成長してきた過去がある。エドゥアルド・ネットの出場停止によって、トップ下ではなく、この日はボランチに入った中村が言う。
「点を取ってくれた選手なので言わなくてもいいと思うけど、今日に関してはもっとやれたと思う。最後のミスはもちろん、それまでのプレーもまだまだ怖さが足りないし、ミスも多い。三好ならもっとできるはずだから、言わなきゃいけないことは言う」
「その『代役』って言い方、もうやめませんか」
大久保とエドゥアルド・ネットの出場停止によってチャンスを掴んだ三好と狩野健太がゴールを奪い、1トップにポジションを移した小林も、決勝ゴールという最高の形でミッションを果たしてみせた。
そんな、この日の彼らの活躍を見て思い出したのは、5年前の中村の言葉だった。
2011年11月、ブラジル・ワールドカップのアジア3次予選。負傷で本田圭佑が不在だったため、トップ下を務めることが予想された中村が、取材陣から投げかけられた「本田の代役」という言葉に反応した。
「その『代役』って言い方、もうやめませんか。俺は圭佑のようにはプレーできないし、圭佑だって俺と同じプレーはできない。監督が俺を使うということは、自分の特徴を生かしたプレーを期待しているっていうことだから」