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悔し涙だけは、もう、こぼさない。
浅野拓磨が目指す「ケロっと」精神。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2016/08/29 11:00
五輪でも、浅野拓磨の速さは相手にプレッシャーを与えていた。海外での経験は彼を一段上のステージに押し上げるか。
決定的なシュートを外しても、涙は流さない。
国際舞台でしのぎを削れるタフなメンタルを意識しつつも、浅野は足元をしっかりと見つめている。日本代表だからといって背伸びをすることはなく、等身大の自分を見失うことがないのだ。
「周りの眼が厳しくなって、『浅野、全然アカンな』って言われることがあっても、自分はまだそれぐらいの選手なんだという気持ちでやっていきます。シュートを外したとしても、自分の気持ちのなかではしっかり反省しつつ、周りからはケロっとしているように見られるぐらいのメンタルの強さを身に付けていきたい。決定的なシュートを外しても、涙を流さんくらいのメンタルの強さを」
ロシアへの道のりは、リオ五輪の悔しさを晴らす好機でもある。
「五輪はグループリーグを突破できなかったので、課題として取り組んでいかなきゃいけないものはたくさんあります。でも、それがすべてではないと思うんです。チームとしては結果を残せなかったですけど、試合でできたこと、自信をつけられたことも、あると思います」
今も悔しさ募る、五輪第2戦の不甲斐なさ。
コロンビアとの第2戦を思い返すと、いまでも気持ちのざわつきを抑えられない。悔しさで胸が焼かれるような気持になる。
「2-2に追いついたあと、3点目を取れるチャンスがあった。それを僕が生かしていれば、コロンビアに勝つことができたし、グループリーグも突破できたと思うんです。チームに迷惑をかけてしまいました。だからこそ、あの経験をムダにしちゃいけない。チームの勝利に結びつくゴールを、決められる選手になっていきたいんです」
チーム最年少の21歳が、もしまたピッチで涙するとしたら──日本代表の勝利につながるゴールを決め、それがチームに何か大きなものをもたらせば、ありのままの感情を爆発させることがあるかもしれない。
悔し涙だけは、もう、こぼさない。