“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小倉監督休養は“手遅れ”なのか。
楢崎正剛が吐露した名古屋の現状。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE PHOTO
posted2016/08/26 11:30
小倉体制最後となった柏戦のベンチ。新監督に就任したジュロブスキー氏(右端)の目にはどのように映っているのだろうか。
小倉体制ラストゲームでの“消極的な最終手段”。
では、どう制御不能だったのか。
それは事実上のラストゲームとなった先週末の試合、J1リーグセカンドステージ第9節のアウェー・柏戦に如実に現れていた。
その柏戦を、詳細に振り返りたい。
この試合の名古屋を象徴するのは、ピッチに充満していた悲壮感だろう。それは何も、タイムアップのホイッスルが鳴り響いてから漂ったわけではない。キックオフのホイッスルが鳴り響いた直後から、ネガティブな空気がチームを支配していた。
名古屋は小倉監督のもとで5バックを採用し、守備的な布陣をとっていた。守備的と言えば聞こえはいいが、それは思うような攻撃が構築出来ないゆえの“最終手段”だった。もちろんプロである以上、勝利を追求せねばならず、まずは失点をしないという思考回路でその手段に行き着くことは理解出来る。だが、それさえも機能しなかったら、チームはどうなって行くのか。
最終手段を講じなければいけない状態にも関わらず、名古屋からは危機感と、この現状を何とかしようとする反骨心が全く見えてこなかった。はっきりと言うと“ただ失点を待っている”ような試合運びにしか見えなかった。
“敢えて回させている”とは真逆の守備的戦術。
名古屋はポゼッションを得意とする柏に、面白いようにパスを繋がれた。ポゼッション対ブロック守備の構図でよくある“敢えて回させている”という状況を作り出していたならばいい。しかし現実は、柏の2シャドーやアンカーから出されるバイタルエリアへの縦パスやクサビに対するケアが一切無く、簡単にシュートまで持ち込まれる展開だった。
特に、一番注意を払うべきFWクリスティアーノとディエゴ・オリヴェイラに自由にボールを受けさせては、個人技を披露されてしまう始末。中でもクリスティアーノは、序盤から余裕たっぷりのヒールパスや反転突破を存分に披露し、気持ち良さそうにプレーをしていた。前半だけで柏の放ったシュートは11本、名古屋は1本。この時点で0-0というスコアが信じられないような出来だった。
「前半0-0の中で自分たちの時間を作れたが、フィニッシュの精度や動き出しの問題でチャンスらしいチャンスが出来なかった」と試合後に小倉監督は前半を振り返ったが、自分達の時間は狙って出来たのではなく、相手のフィニッシュの精度の悪さに助けられ、結果としてその時間が生まれたに過ぎなかった。