プロ野球PRESSBACK NUMBER
西武・大石達也がようやく帰ってきた。
同期の牧田、秋山を今度は追う側に。
posted2016/07/26 07:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
NIKKAN SPORTS
伝説として語り継がれている早稲田実業と駒大苫小牧の決勝戦が注目を集めた2006年夏。福岡県大会で敗れ、早い夏の終わりを迎えていた福岡大大濠高の大石達也は、大学のセレクションを受けるために練習を続けながら、甲子園大会をテレビで観戦していた。
決勝のマウンドにいた早稲田実業のエースと、のちに大学でチームメイトになることは、そのときまだ知らなかった。「最後の打者をストレートで三振に取ったシーンが最も印象に残っています」と振り返る、傍観者の1人だった。
その4年後、まさか自分が、あの夏の主役だった斎藤佑樹よりも多い球団からの指名を受けてプロ入りするとは、夢にも思っていなかっただろう。
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6球団の競合の末、ライオンズに入団して6年目を迎える今シーズン。大石は7月24日現在、17試合に登板し防御率1.98の成績を残している。5月25日に今季一軍初登板を果たしてからは、中継ぎとして登板し、14試合を連続で無失点に抑えてきた。
7月11日の東北楽天戦で初めて、リードしている場面で登板しホールドを記録。19日の千葉ロッテ戦では井口資仁に満塁本塁打を浴びたものの、その1試合以外は完璧に相手打線を抑えてきた。「プロ入りしてからはいちばんいい状態」と語るシーズンを過ごしている。
一昨年は一軍登板無し、昨年はわずか3試合。
大きな期待を背負ってプロ入りした大石だが、通算成績が1勝6敗8セーブに終わっている原因のひとつが、故障だった。
右肩痛に悩まされるようになったのは、入団した2011年から。その翌年には一軍初登板、初勝利を果たすものの、'14年に右肩痛が悪化。少し良くなり、ボールを投げると痛みが再発する。それを幾度も繰り返すうちに、大石のいちばんのセールスポイントである速球に伸びがなくなった。'14年は一軍マウンドに上がることなく終了。昨年はわずか3試合の登板に終わり、今年の春季キャンプでは一軍メンバーから外れた。
横田久則・二軍監督は言う。
「大学時代の彼の動画を見たことがありますが、僕がコーチとして西武に入ってきたときは、その大学時代の面影はなかったですね。フォームが変わってしまういちばんの要因は、やはり故障の影響が大きいと思います」
その故障が何年にも及び、痛みをかばって投げるうち、本来の姿を失っていった。