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西武・大石達也がようやく帰ってきた。
同期の牧田、秋山を今度は追う側に。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/07/26 07:00
斎藤佑樹、大石達也、福井優也――2010年の早稲田大学の3人の投手は、紛れも無くドラフトの目玉だった。今季、大石は7月19日ロッテ戦以外は無失点である(7月24日現在)。
身体能力の高さと打力で、打者転向もささやかれたが。
現在も、右肩の状態については「投げた次の日、どんな状態かという不安は残っている」と大石は語る。痛みが引いてはまたぶり返すという症状を繰り返してきただけに、コンディションに関して発言が慎重になるのも無理はない。
「痛みがない状態で投げられるようになったのは今年の春のキャンプくらいですね。実戦からかなり遠ざかっていたので、最初はファームで投げるときもすごく緊張していました。でも今は緊張せずに、何も考えずに思い切り投げられています。今はストレートで空振り、ファウルが取れるようになったので、ある程度、手応えを感じています」
リハビリ中のことに話題が及ぶと、きっぱりと言った。
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「ただ、黙々とリハビリをするしかないと思っていました。それでくさるようじゃ、せっかくプロに入った意味がないと思って……。それに、プロに入った以上、やっぱり活躍したいとも思っていました」
その身体能力の高さや打力が注目され、打者転向をささやかれた時期もあった。入団時に注目された分、周囲の期待も大きかった。しかし、大石は本人の言葉が表すように黙々と、辛抱強く野球と向き合った。
140キロでも打者を詰まらせる、独特のストレート。
今シーズンの好調の要因について尋ねられると、こう答える。
「肩を痛めたこともあって、昨年オフの自主トレと今年のキャンプでは例年以上に肩回りの強化を取り入れました。変えたのは、それくらいですね。それとリハビリを兼ねて、ウェイトトレーニングを多めにしたくらいです。まだまだ、相手の打者が打ち損じてくれていることもあるし、まだ、自信といえるほどのものは感じていません」
これからが、大石の本当の勝負のときと言っていいだろう。
土肥義弘ピッチングコーチはこう評する。
「以前、一軍でクローザーとして登板していたときは、おそらく肩の痛みもあって大石の本来の状態ではなかったと思います。彼のストレートは独特で、140キロぐらいでも、十分打者を詰まらせることができます。今は、そのストレートが戻ってきたし、スピードガンでも球速は140キロ台の後半が出ています。ストライク先行で自分のスタイルを貫けているのがいちばんいいですね。ゆくゆくは勝っている場面でマウンドを託すこともできると思っています」