マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
笠原将生の弟、笠原大芽は何を待つ。
SB二軍で好投を続ける男の思い出。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/14 11:00
2013年、ドラフト5位でソフトバンクに入団した笠原大芽。一軍の層は厚いが、今こそ期待したい選手だ。
唯一触れられるのを嫌がった、父と兄の話。
唯一、父がドラフト1位でプロに進んだ投手だったこと。お兄さんも同じ高校の投手で、ちょっと前にプロに進んだこと。そこに触れられることを嫌がっていた。
オレはオレです……。
そんな“信号”が送られてきた。
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その日のピッチングが不本意だったことにあまりこだわるので、こんなことを訊いてみた。調子が上がってこない時って、いつもどうしてるの?
んんんん……。
10秒、15秒、考えていた。
適当なところで折り合いつけて、そこらへんに転がっているコメントを返してくるようなヤツじゃなかった。
「待ちます!」
すぐには、その意味をはかりかねた。
「走って、トレーニングして、投げて。いつもどおり練習しながら、待ちます! 戻ってくるのを、待ちます!」
間違いのないヤツだな……。
決して流暢ではないが、なにかに刻みつけるように語るひと言、ひと言が妙に頼もしかった。
これは高倉健だね。同じ福岡の、遠賀川の近くで生まれ育った2人。勝手に重ねて、フフッとちょっとおかしく思ったものだ。
待ちます! と言い切る者に、ただ待つヤツはいない。
待ちます!
では今、笠原大芽が待っているものとは何か? きっかけを掴みかけている自分を、さらに上へのし上げてくれる“力”なのか。
待ちます!
いい言葉だ。
待ちます! と言い切る者に、ただ何もせずに待っているだけのヤツはいない。懸命に今を生き、そのことで将来をさらによく生きようと懸命に励みながら、その時を待つ。“待ち方”とは、そういうものだ。
弟・笠原大芽の奮投を、兄・笠原将生はどこで聞くのか、そして、どう聞くのか。
待ちます!
この言葉を、兄・将生はどこで聞くのか、そして、どう聞くのか。
もっと、もっと強くなれ、笠原大芽。
そして、強くなって、生まれ変れ、笠原将生。