マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
笠原将生の弟、笠原大芽は何を待つ。
SB二軍で好投を続ける男の思い出。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/14 11:00
2013年、ドラフト5位でソフトバンクに入団した笠原大芽。一軍の層は厚いが、今こそ期待したい選手だ。
2013年、高校3年の笠原大芽の40球を受けた。
思い出した場面があった。
2013年・初春。私は福岡工大城東高3年・笠原大芽のピッチングを受けていた。
まだ肌寒さが残る曇り空の下、それでも、左腕がそのままどこかに吹っ飛んでいきそうな彼独特の腕の振りをフル回転させて、およそ40球の全力投球だった。
ADVERTISEMENT
時計の文字盤で“1時”ほどの角度から投げ下ろすクロスファイアー。
いったんポッと抜けたようになってから垂直に落下してくるカーブは、右と左の違いはあったが、PL学園当時の前田健太(現・ドジャース)の“それ”のようだった。
「すみません、まっすぐがダメでした。半分ぐらい、垂れてませんでしたか?」
くやしそうに、笠原大芽はそんな謝りかたをしてくれた。
切れ長の目。面長でも、あごの骨がしっかり張って、意思の強さが顔つきに表れていた。
「ここのところ、思うようにボールが行かなくて……」
そこまで悪いボールじゃなかった。それどころか、受けて30分も経っていたのに、まだ左手のヒラがジンジンしていた。
垂れてるように見えたのは、オレの捕り方がヘタだったからじゃない? ミットが下がって……。そう正直な感想を伝えても、
「いや、わかります、自分の投げたボールですから。自分、ピッチャーなんで」
まだ18歳になったばかり。そのわりには、語り口にもその言葉にも、大人びた説得力があった。
簡単には笑わない、しかし無愛想なわけじゃない。
しっかりしたヤツだなぁ。選んだ投手がそういう人間でうれしかった。
いろんな話をした。
高校生らしい“弱み”を見つけたくて、意地悪な角度からもいろいろ問いかけてみた。簡単に笑わないヤツだった。
決して無愛想というわけじゃない。物事を斜めに見るような“すかした”ところもない。むしろ、覚悟とでもいうような、腹の据わったムードが九州男児を思わせた。