マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
笠原将生の弟、笠原大芽は何を待つ。
SB二軍で好投を続ける男の思い出。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/14 11:00
2013年、ドラフト5位でソフトバンクに入団した笠原大芽。一軍の層は厚いが、今こそ期待したい選手だ。
逮捕された笠原将生の弟・大芽はソフトバンクの選手。
そんな頃の4月29日。
賭博開帳図利ほう助容疑で読売ジャイアンツ・笠原将生投手逮捕。翌日のスポーツ紙は、すべて一面で報じた。
いわゆる「野球賭博」。それまでにもさんざん報道されていたから、おそらくそういうてん末に至るだろうと予想していたことだったが、しかし実際に、現役のプロ野球選手が“逮捕”される現実がなかなかピンと来なかった。
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それぐらいプロ野球選手と犯罪とは、本来、遠い遠い距離をとってかけ離れていなくてはならない関係だったはず、なのだ。
中1日経って、スポーツ紙の片隅にこんな記事を見つけて驚いた。
前日のウエスタンリーグの試合結果を報じる記事の中に、ソフトバンク・笠原大芽(たいが)が広島カープ二軍を相手に、先発して6イニングを5安打2失点に抑えたことを見つけたからだ。
「このタイミングで、投げるんだ……」
いろんな思いでそんな言葉が出た。
実のお兄さんが“そういう事情”の時に、投げて試合を作ってしまう笠原大芽も大芽だが、使うほうも使うほうだ。そっとしておいてあげれば、という思いもあった。
逆に、こういう時だから投げさせた。そんなソフトバンク・水上善雄二軍監督の辛口の愛情があったのかもしれない。
使ったほうもすごいし、それに応えてこの時とばかり、しっかり仕事をしてみせたほうはもっとすごい。久しぶりに、胸がスッとしたものだ。
現在ウエスタンリーグでの防御率2位!
笠原大芽の奮投は、その後も続いた。
5月18日にはオリックスを9回3安打の無失点と完璧に抑えると、31日にはリリーフの3イニングをやはり1安打無失点に抑えて、斐紹(あやつぐ)の満塁ホーマーを引き出す。
さらに、月が替わっても笠原大芽の奮戦は続き、6月5日には阪神二軍相手に6イニングを3点でしのぐと、10日には広島二軍を7回無失点。10三振を奪って、ここまで4勝2敗。
投手の実力を最も正確に映す防御率は1.81、ウエスタンリーグの2位にランキングされている。