マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
東大・宮台康平は本当に一流なのか。
“勉強と両立させた野球”の副作用も。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/04/27 10:30
昨年は連敗を史上ワーストの94まで伸ばしてしまった東大野球部。好投を続ける宮台も、今季は実は白星はまだない。
9回を投げた3日後の登板では……。
明大打線を9回1点に抑えた3日後。
間に雨がはさまって1勝1敗で迎えた第3戦。当然のごとく、エース必勝の先発だ。
実は、私は“この日”が見たかった。
肩が本調子ではなかった昨年。宮台康平は球数制限の縛りの中で投げていた。そして今季、1試合9イニング投げたあとがどうなのか。それを見たかった。
立ち上がり、リーグ戦デビューで1番抜擢の越智達矢中堅手(2年・丹原高)に速球をフルスイングされた宮台康平。球道の高低を間違えて空振りになったものの、バットヘッドが背中を叩くほどのフルスイングは、タイミングを合わされた証拠だ。
ボールが見やすくなっている……。
3日前は、明大打線の中の誰一人としてタイミングの合ったフルスイングなどできなかった宮台康平の速球を、試合開始の先頭打者、それも今日がリーグ戦初舞台の2年生にいきなりタイミングを捉えられている。
体が正面を向くのが早い。ネット裏からの視線で、宮台康平の胸の「TOKYO」マークがすぐに見えてしまう。
これじゃ、クロスファイアーがシュート回転してしまう……。
思った途端に、3番逢澤峻介右翼手(2年・関西高)がクロスファイアーをレフトの左に弾き返す。
さらに一巡目で、3人の左打者がシュート回転のボールを次々にレフトにライナーで打ち返し、右打ちの2番河野祐斗二塁手(3年・鳴門高)には真ん中の速球を軽々とレフトオーバーの二塁打にされてしまった。
3回で3失点してマウンドを降りた宮台。
3イニング投げて、6安打3失点。
3日前あれだけ相手を苦しめたはずの速球が、打者の意図のままに弾き返されて6安打。コンスタントに140キロ前後をマークしていた球速も、この日は135キロをなかなか超えられなかった。
気持ちよく腕が振れていないなぁ、と思いながら見ていた。
サインに再三首を振ったり、間合いをことさら長くとっているのは、“投げる心”が弾んでいないからだ。
どこか痛いのかな……。そうつい思ってしまうが、アスリートが、見ている者から心配されてはいけない。