炎の一筆入魂BACK NUMBER
黒田博樹が自ら詰めた仲間との距離。
大瀬良に助言、新井いじりは恒例に。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/03/14 10:30
2月18日、大瀬良大地(右)にアドバイスをする黒田博樹。
昨年は周囲も本人も気を使いあっていた。
昨春キャンプ最終盤に大瀬良から黒田にツーシームの投げ方を聞いたことはあった。シーズン中も野村が黒田の投球練習を見ることを依頼したこともあった。だが、黒田から直接技術的な指導をするのは初めてだった。
現役続行を決めた昨年末、契約を更改した黒田は1年目を振り返ってこう口にしていた。
「最初は(選手のことが)まったく分からなかった。初めて同じユニホームを着る選手ばかりだったので、そういう部分で分からないこともありました。それこそ8年ぶりに帰ってきて、日本の野球自体、僕自身分からないことがたくさんあった。そういう部分での難しさがあった」
気を使っていたのは、周囲だけではない。黒田もまた周囲に気を使っていた。
7年のブランク、周囲との距離を黒田自身も埋めようとしていた。そして今年黒田は変わろうとしている。
実は……常に「面白いこと」を狙っている黒田!?
今年、エースだった前田健太が米大リーグへ移籍。
大黒柱を失い、41歳となった黒田にかかる期待は大きい。
昨季も十分すぎる期待を背負っていたその上に、さらなる重圧がのしかかる。そんな中でも、後輩に男気を継承する使命も感じている。
「何か気づいたことがあれば(伝える)。それは監督からも、球団からも言われている。今シーズンよりは視野を広げて伝えていけることは伝えていきたいと思います」
まさに有言実行。春季キャンプの言動は、今季にかける黒田の思いが表れていた。
黒田は新たな自分に変わろうとしているのではなく、等身大の自分に変わろうとしているのかもしれない。
昨年大型契約を蹴って広島に帰ってきた「男気」という言葉から物静かな印象を与えているが、実際は大阪出身者らしく常に何か面白いことをやってやろうというサービス精神にあふれる選手だ。そんな一面がチームにも知られるようになってきた。