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金子千尋が歩む完全復活への道のり。
自分に言い聞かせる「焦ってないよ」。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/02/16 10:50

金子千尋が歩む完全復活への道のり。自分に言い聞かせる「焦ってないよ」。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

金子はオリックス入団前にも右肘故障が発覚した経緯もあるだけに、体のケアには人一倍気を使っている。

右肘を庇って勝ち星に執着した結果、負担が肩に。

 復帰登板が5月23日のロッテ戦まで伸びたことが、金子をさらに焦らせた。「1カ月2勝」という個人が掲げる最低ノルマを順当にクリアしていけば、10勝まで手が届くだろう。そんな計算も、本来冷静な金子の思考を狂わせたのかもしれない。

 肩の異変に気づいたのは9月だった。それまでも同じ箇所に違和感を訴えたことはあったが、短期間のリハビリやトレーニングで回復することができていた。しかし今回は違った。無意識に右肘を庇って投げていたことや、勝ち星への執着心が投球フォームのメカニズムに悪影響を及ぼし、今まで痛めたことがなかった肩の筋肉に炎症を起こしてしまったという。

 金子は自分の判断ミスを悔いるように、昨年の自分を振り返っていた。

「一軍で投げている以上は、そこに早く気づかなきゃいけなかった。気づけなかったのは僕の責任。本当になんて言うんですかね、いろんなことを思い知らされたシーズンではありましたね」

「リハビリやトレーニングの引き出しは増えました」

 代償は高かったのかもしれない。だが金子は「リハビリやトレーニングの引き出しは増えました」と前を向く。それがこのキャンプで生かされているのだとしたら、彼は着実に本来の自分に戻りつつある。

 3度のトミー・ジョン手術を克服したヤクルトの館山昌平は、手術を経ても投手としての能力は「手術をする前に戻ることができる」と言っている。

 金子にとって、手術前とは沢村賞に輝いた'14年だ。焦らず、現状を見すえて調整に取り組む。それを実践し続ければ、今季はあの圧倒的なパフォーマンスが蘇る年となる。

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