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金子千尋が歩む完全復活への道のり。
自分に言い聞かせる「焦ってないよ」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/02/16 10:50
金子はオリックス入団前にも右肘故障が発覚した経緯もあるだけに、体のケアには人一倍気を使っている。
「焦ってない」と言い聞かせることの大事さ。
「多少の焦りは必要なのかもしれないですけど、『焦っていないよ』と自分に言い聞かせるというか。やらなきゃいけないことがたくさんあるので、そういった気持ちの駆け引きはありますね」
金子の心情を推測すると、今はまだ彼自身が気持ちの駆け引きをしている最中なのだ。今日のブルペンがよかった、悪かったと一喜一憂するのではなく、シーズン通して結果を出すという目的のために、キャンプでは焦らず本来の自分の投球を築き上げる作業を地道に続けているのではないだろうか。
焦りがあるなかでも自分を見失わないように言い聞かせる金子は、自身が喫した失敗した経験を踏まえている。
リハビリが進まず、シーズンが迫ったことでの失敗。
初めて右肘にメスを入れた'11年、金子は自らが思い描くプラン通りに復帰を果たした。2月に手術し開幕にはさすがに間に合わなかったが、シーズンでは10勝を挙げて最低限の仕事を果たすことができた。
2度目の肘の手術となった'14年も、「前回と同じようにリハビリすれば」とタカをくくっていたわけでは決してない。3年経てば筋肉の質も変わるし、トレーニング方法も進化する。それらの要素を考慮した上で「来年の開幕までに復帰する」と照準を合わせたわけだが「それがよくなかった」と金子は言った。
「リハビリが思うように進まない。でも、シーズンは迫っている。早く投げたいけど投げられない……うまくいかないことばかりが続いてしまったんです」