錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
全豪で錦織圭の敵は年上か、年下か。
「若手ではない」立ち位置はタフだ!
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/01/17 10:40
新シーズンを迎えるにあたって「グランドスラムや大きな大会で、より良い結果を残したい」と語っている錦織。
「若手ではない」錦織に20代前半の選手が襲いかかる。
一方チョリッチは、昨年の楽天オープンで対戦した錦織も「2、3年のうちに余裕でトップ10に上がってくる」と太鼓判を押した逸材だ。
19歳でのツアー決勝進出は、2008年のデルレイビーチで錦織が優勝して以来のこと。ちなみに錦織の18歳1カ月での優勝は、1998年にレイトン・ヒューイットが16歳10カ月でツアー優勝して以来の記録だったのだが、こうして見ると、いかに錦織が稀有な逸材であったかということがあらためて思われる。
チョリッチは錦織のように優勝までは果たせなかった。しかし、確実に新しい時代の風はそこここで吹き始めているのだ。
ブリスベンのベスト8の顔ぶれには、25歳のラオニッチ、24歳のグリゴール・ディミトロフ、23歳のバーナード・トミック、22歳のドミニク・ティーム、21歳のルカ・プイエと錦織より若い選手が半分以上含まれていた。
錦織は自分がもう「若手ではない」(2015年の発言)と自覚しているが、これまで錦織が準々決勝以上に進んだ大会で、ベスト8に年下が5人というのはもっとも多い。
ジョコビッチらトップ選手にも若手の挑戦者が。
その中のトミックに錦織はフルセットで敗れたのだが、勝利が見えてからのトミックの気迫に、錦織が今年戦わなければならない敵の手強さを見た。
18歳のときにウィンブルドンのベスト8入りを果たしたトミックに対し、錦織は過去2勝していたが、錦織自身がたとえばフェデラーやジョコビッチに2度目の対戦で勝ち、アンディ・マレーには4度目の対戦で、ナダルには8回目でついに勝ったように、対戦回数を重ねていけば挑戦する者とされる者との差は詰まっていくのが常だ。
やんちゃ気質のトミックは、錦織との対戦前、「ケイと戦うのは怖い。ノバクやラファやロジャーでさえそう感じている」と話しながらも、「去年の僕とは違う。勝つためにできることは全てやり尽くす」と、その様子は自信と意欲に満ちていた。
恐れ知らずの若者たちの挑戦を受けるには、あらゆる面での頑丈さが求められるだろう。昨年から学んだことでもある。
「メンタルもそうだけど、フィジカル的にももう少し強くならないとダメ。あまりケガをしないようにすることは常に大事になってくる」
今年の課題について、そうも語った錦織。昨年はウィンブルドンの2回戦棄権や、パリ・マスターズの棄権といった結果を招いたケガがいくつかあったが、それを長引かせなかったことが2年連続でトップ8に名を列ねた背景にある。