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「マレーシア事件」その後の顛末。
ロレンソが王者に、ロッシは……。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/11/20 10:30
バレンシアの表彰台に立ったのは、ロレンソ、マルケス、ペドロサのスペイン勢3人。ロッシはトップから20秒ほど遅れての4位に終わった。
運営が一時休戦を呼びかけ、レースがスタート。
事態を受けて、グランプリを運営統括するドルナとFIMは、「マレーシア事件」の当事者であるロッシとマルケス、そして事件を受けてマルケスの側に立ち、ロッシとチャンピオン争いをするロレンソを個別に呼んで、「マレーシア事件についてのコメントを自粛し最終戦バレンシアGPに集中して欲しい」と要請した。
さらにホンダに対しても、データの公表の取りやめを要請。その結果、レース終了まではこの件に関して3選手ともにコメントすることはなく、一時休戦のまま決勝日を迎えることになった。
決勝では先に記した通り、ロレンソが今季7勝目を挙げてタイトルを獲得した。
しかし、4位まで追い上げるもトップ3には大きく離され、6年ぶり通算10回目のタイトル獲得を果たせなかったロッシは、マルケスが一度もロレンソを抜かなかったことに対して、レース後に怒りをぶちまけた。
ロッシ「マルケスはロレンソを助けたかった」
以下は、そのコメントの主だった部分である。
「今年のチャンピオンシップはここ数年で最高に良かったし、ホルヘとの戦いは最終戦までもつれ込んだ。でも残念ながら最後の3戦で何かが変わった。これは僕をはじめ、多くの人にとっても思いもよらないことだった。それは、マルク・マルケスが、ロレンソがチャンピオンシップで勝てるように擁護したからだ。
最初はフィリップ・アイランドだった。その後、状況はどんどん悪くなり、マレーシアでは残念ながら接触してマルケスが転倒した。そして、今大会の木曜日には最後尾グリッドからのスタートが決まり、僕のチャンピオンシップはこの時点で終わっていた。というのも、マルケスがロレンソを守るという『仕事』を最終戦でもやるだろうと確信していたからだ。最終ラップに起きたことは、スポーツ界全体において悪いことだった。こうしたことはこれまでに一度もなかった。僕は自分のカードをすべて出し切った。僕はチャンピオンシップに負ける心の準備はできていた。確かにロレンソは常に速いが、でも、このような形で彼がチャンピオンを獲るのはフェアではない。
ここ2年のマルケスのレースを見れば、彼が常にオーバーテイクしようとするライダーだということがわかる。少なくとも最終ラップにはオーバーテイクしようとするはずだ。それなのに、なぜマルク・マルケスはロレンソをオーバーテイクしようとなかったのか。なぜ一度も挑戦しなかったのか。ペドロサは最後に2秒縮めてきた。つまりホルヘとマルケスは待っていただけだし、マルケスはロレンソを助けたかったのだと思う。マルケスはヘルメットを取った後にそれは真実ではないと言ったけれど、ロレンソを助けられてうれしそうにしていたのはテレビを見ても明らかだ」