モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
「マレーシア事件」その後の顛末。
ロレンソが王者に、ロッシは……。
posted2015/11/20 10:30
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
ロッシがマルケスの走行を妨害し、転倒させた「マレーシア事件」は世界的なニュースになった。その2週間後、スペインのバレンシアで開催された最終戦は再び世界の注目を集めることになり、ロッシとタイトル争いをするロレンソが逆転でチャンピオンを獲得した。
その差、7点。総合2位で最終戦を迎えたロレンソは今季5回目のPPから好スタートを切って、一度も首位を譲ることなく今季7勝目を挙げた。
対して「マレーシア事件」で最後尾スタートのペナルティを科せられたロッシは、4位まで追い上げたが、ロレンソが優勝したことでタイトル獲得を果たせなかった。
それにしても、「マレーシア事件」からバレンシアGPにかけて、いろんな出来事が起きた。
もっとも驚いたのは、イタリアの報道バラエティ番組のリポーター2人がスペインのマルケスの自宅を訪れ、ロッシとの接触転倒を称える卑猥なトロフィーを授与しようとしてもみあいになり、警察に通報する騒動になったことだ。それだけではなく、ロッシファンによるソーシャルメディアでのマルケスへの攻撃は強烈そのものだった。
パドックも「マレーシア事件」で持ちきりだった。
そしてロッシは、「マレーシア事件」で下された3点のペナルティとバレンシアGPの最後尾グリッド(ペナルティポイントの累積が4点になったことに対する処罰)を不服とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に裁定の取り消しと軽減、および最後尾グリッドからのスタートというペナルティの一時執行停止を求める訴えを起こした。
だが、バレンシアGP開幕直前の木曜日に一時執行停止の申請が却下され(裁判は継続)、ロッシは最後尾グリッドからスタートすることが決まった。
こうした一連の出来事の中で、僕は木曜日の朝にサーキット入りした。
予想通り、バレンシアのパドックは「マレーシア事件」の話題で持ちきりだった。
ドルナの国際映像はやや不鮮明なものが多いが、マルケスの転倒の原因がロッシの蹴りにあったと信じる者には十分な証拠であり、一方、ロッシを擁護する者やファンにとっては、「ロッシが蹴っていないと言っているし、何度も見てもあれは蹴っていない」とロッシの「蹴っていない」という発言を支持する材料となる。
そんな論争に対して、ホンダはマルケスの転倒の理由を、ロッシがマルケスを蹴ったことでフロントブレーキがかかったからだとし、データを公表すると発表して大きな注目を集めた。