モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
「マレーシア事件」その後の顛末。
ロレンソが王者に、ロッシは……。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/11/20 10:30
バレンシアの表彰台に立ったのは、ロレンソ、マルケス、ペドロサのスペイン勢3人。ロッシはトップから20秒ほど遅れての4位に終わった。
ロッシだからこそあの程度の裁定で済んだ。
そして、チャンピオン争いが佳境を迎えたシーズン終盤戦を前に、僕はロッシとロレンソの間に接触事件が起きる可能性が高いと書いた。それがマルケスとの間に起きるとは予想もしていなかったが。
僕は前回のコラムでロッシの取った行動を非難してきたが、その気持ちは変わらない。
3点のペナルティと累積4点の最後尾グリッドという裁定で済んでいるのは、MotoGPのスーパースターだからこそ。パドックでは多くの関係者が「ロッシだから許されることだ」と思っている。
多くの人が、そして僕も、ロッシのレース界への功績は認めている。今回の一連の出来事も、ロッシだからこそ世界中の注目を集めたことは間違いない。
だからこそ、スーパースターにふさわしい言動を期待していたのだが、ことごとく裏切られたという印象だ。
マルケスを転ばせたことに対してロッシが謝罪すれば、これほど大きな事件にならなかったのではないか。
ロッシは決して過ちを認めることはない。
これまでもそうだが、ロッシがライバルに対して過ちを認めることは決してない。
それが因縁の対決となり、ファンを取り込んでの戦いを繰り広げ、ライバルを徹底的に打ちのめしていく。
今回もそれは変わらなかったし、マルケスの受けた精神的ダメージは想像を絶するものだったに違いない。
これまで起きたロッシとライバルとの因縁の戦いは、彼が謝罪すれば何でもなかった事件が多かった。
なのに、どうして謝罪しないのか。
ロッシファンは「悪いと思っていないからだ」と思うだろう。しかし、僕は違う見方をしているし、それができていれば、ロッシはライバルたち、そして世界中のレースファンから、名実ともに尊敬される偉大なチャンピオンになっていたと思う。