サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
試合前のメディアの心配もどこへやら。
ハリルJがシリア戦で見せた「柔軟性」。
posted2015/10/09 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
日本代表に一番不安を感じるのは、いつだって日本メディアのようだ。
10月8日にオマーンで行われたシリア戦を、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本は3-0で快勝した。ロシアW杯2次予選は全5チームが日程の半分に当たる4試合を終え、日本は3勝1分けの勝点10で首位に躍り出た。
ここまで3戦全勝のシリアは、政情不安を発奮材料としている。
シリアは9月末から開催地のマスカットでキャンプをしており、気候への適応を含めても日本にとってはアウェイゲームとなる。
さらに加えて、日本の海外組のなかには所属クラブで十分に出場機会を得られていない選手がいる──推測込みの材料が折り重なり、シリア戦を前にした報道は危機感を煽るものが多かった気がする。「今年一番難しい試合」というハリルホジッチ監督のコメントも、そうした報道を加速させた。
他ならぬ僕自身も、テストマッチなしでいきなりW杯予選に臨むことに対して、少なからず不安を感じていた。本田圭佑、長友佑都、酒井高徳らのコンディションを危惧していた。
前半の決定機は一度だけ。
前半は我慢の時間が続いた。
現地入りして間もない日本の動きが重かったからであり、シリアがハイペースでゲームを運んだからでもある。W杯2次予選でこれまで対戦したシンガポール、カンボジア、アフガニスタンとは異なり、攻撃にも意識を傾ける相手と久しぶりに向き合ったことも、前半の戦いを難しくした。
もちろん、個人的なコンディションとコンビネーションの問題もあった。ゲームに入り切れていない選手が多く、前半は決定的なシーンを一度しか作り出せなかった。26分の本田の一撃である。
左サイドのFKに反応した酒井高の動き出しは素晴らしく、彼の動きを見逃さなかった香川のクイックリスタートも申し分のないものだったが、背番号4がペナルティエリア内から放った左足シュートはワクをとらえられなかった。本田らしくないシュートミスである。