スタイルに固執しなかったのが何よりの成果。

　練り上げたパターンを相手に見せつけることで、対戦相手を困惑させるのがリスタートのメリットである。目の前の相手だけでなく、これから戦う相手も、だ。シリアを突き放す貴重な追加点は、今後につながるゴールでもあった。

　リードを2点に広げたうえに、シリアの運動量は落ちている。こうなれば、いよいよ日本の強みが発揮される。88分、香川に代わってトップ下に入っていた清武弘嗣のパスに反応し、本田が左サイドを抜け出す。サポートに走った宇佐美が、ペナルティエリア内からワンタッチシュートを流し込んだ。

　内容の乏しかった前半から一転して、後半の日本は様々な表情をのぞかせた。0－0の時間帯は1本の縦パスから、1－0の時間帯はリスタートからゴールをおとしいれ、相手の運動量が落ちてきたところでコンビネーションプレーからダメ押し点を奪う。自分たちのスタイルに固執することなく勝利をつかんだのは、シリア戦の何よりの成果だろう。

　メディアの不安を吹き飛ばすかのような快勝は、歩幅は小さくともチームが前進していることを示すものだ。あわや失点という場面が3つあったように、依然として課題はある。とはいえ、この日のような柔軟性を継続して見せていくことができれば、2次予選の首位通過に苦労することはないだろう。