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ボルトを抜いた16歳・サニブラウン。
「五輪の金と世界記録」狙いを公言。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2015/07/28 10:40

ボルトを抜いた16歳・サニブラウン。「五輪の金と世界記録」狙いを公言。<Number Web> photograph by AFLO

世界ユースで日本勢初となる100m優勝を果たしたサニブラウン・アブデル・ハキーム。世界陸上にも出場が濃厚で、北京の地で衝撃の走りを披露することはできるか。

はっきりと世界一を目指すことを明言。

 高校2年生になると、サニブラウンの成長は一気に加速する。5月の静岡国際陸上では200mで20秒73を出し2位。同月の東京高校対校100mで10秒30をマークし優勝。両方の種目で日本選手権出場権を得た。

 迎えた6月の日本選手権では、社会人を含め日本のトップクラスが顔をそろえる中、200m、100mともに2位。両種目で表彰台に上がるのは、高校生としては戦後初めてのことだった。そして、今回の世界ユースでの成績につながる。

 本人の野心は広大だ。

「2つの金メダルは狙っていたとおりですが、もっと大きなことを成し遂げたいと思っています。オリンピックの金メダルと世界新記録です。この大会は大きなステップになりました」

 国際陸上競技連盟で紹介された世界ユースのコメントで、はっきり、世界一を目指す意志を示している。

 帰国後はこう語った。

「(100mの9秒台は)通過点だと思っています。ベストの走りができれば、結果はついてきます」

フォームの乱れ、トレーニングの甘さなど全てが伸びしろ。

 むろん、世界ユースでの活躍が、ただちに将来を保証するわけではない。これまでも、世界ユースでは日本の選手が何度も表彰台に上がってきた。この年代では、世界の上位と日本の間に大きな差はない。ただ、シニアの年齢に入ると海外の選手に置いていかれてしまうのは、これまでのオリンピックや世界選手権などの結果が示している。

 それでも大きな期待が集まるのは、潜在能力の高さにある。日本選手権での後半のフォームの乱れ、世界ユースでのスタートの出遅れなど、サニブラウンの走りはまだ多くの点で未完成だ。まだ筋力トレーニングに本格的に取り組んでいるわけでもない。

 それでも次々と好タイムを出せるのは、187cmの身長による幅のあるストライドをはじめ、身体能力の高さが圧倒的だからだ。

 素材のよさがあるからこその、期待。

 世界ユースの200mで世界選手権の参加標準記録を突破したことで、今年8月に北京で行なわれる同大会の代表選出も濃厚である。

「失うものは何もないので、選ばれたらチャレンジャーとして頑張りたいと思います」

 日本短距離の歴史を塗り替える存在になっていけるか。

 これからの成長が楽しみなスプリンターが、また一人、現れた。

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