リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
なぜレアルは「戦力不足」なのか。
“代えが利かない選手”という諸刃。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2015/04/09 10:50
29試合を消化して首位バルセロナの勝ち点71に対し、追うレアル・マドリーは67。就任2年目の指揮官アンチェロッティの勝算やいかに。
「普段はチームの一員なのに、肝心の週末は部外者だ」
「挫折を感じている。僕はチームに協力し、力になり、練習では100%を出している。でも試合で使ってもらえるチャンスはほとんどない。普段はチームの一員なのに、肝心の週末になると部外者だ。自信は失うまいと思っているけれど、時に自分が信じられなくなる」
このインタビュー直前に行なわれたメキシコ対エクアドル戦にチチャリートは先発し、目を見張るゴールを決めた。少なくとも最近のコンディションは悪くないし、実力が落ちたわけでもない。
なのにチャンスを与えられないのは、単にいまのマドリーが必要としているのはチチャリートのプレイではないからだ。
ベンゼマ、モドリッチという代えの利かない選手。
客観的に考えて、クラシコ後半の展開はチチャリートにとってはチャンスだった。厚く攻めながら1点が取れないチームが、流れを変えるためにフォワードを入れ替えるのはよくあることだ。
ところがアンチェロッティは、ベンゼマを下げようとしなかった。クリスティアーノ・ロナウドとベイルを活かすことに、ベンゼマが誰よりも長けているからである。
フォワードを選ぶ際、アンチェロッティの頭の中がベンゼマ一択であることはチチャリートの言葉からもわかる。実際ベンゼマがリーガの試合を欠場したのは、風邪と熱でダウンした昨年10月のレバンテ戦が最後。以来、明らかなコンディション不良があっても監督はベンゼマを起用し続けている。
クラシコではまた、故障明け3戦目で体調万全とは言い難いモドリッチが88分間プレイした。こちらも代わりを務められる者がいないからだ。バルサのお株を奪うパスサッカーの核となっていた彼を下げてしまったら、逆転は不可能とアンチェロッティは考えたのだろう。