野球クロスロードBACK NUMBER
突出する個が噛み合わないオリックス。
挽回のヒントは、2003年の阪神・金本。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/04/08 11:40
今季は3番に座ることが多い糸井嘉男だが、4月7日現在、打率.147と低迷している。チームの巻き返しのためにも復調が待たれる。
苦戦の予感は、開幕戦から既にあった。
苦戦の予感は、西武との開幕戦から既にあった。
初回の1死二塁で糸井が初球に手を出しレフトフライ。この試合最大のチャンスだった6回の1死二、三塁でもブランコが内角の難しいボールをショートに打ち上げ、T-岡田も、牧田和久の外角低めのシンカーにあっさりと屈した。相手の打たせて取る投球が冴えていたとはいえ、オリックスの攻撃はあまりにも淡白だったのだ。
「今日は負けてしまったが、我々らしいゲーム運びをすることはできたと思う」
敗戦後、森脇浩司監督は、あくまでも前向きな姿勢を見せていたし、連敗中も弱気な発言は見られなかった。だが、開幕から10試合で2勝8敗の最下位。チーム打率も12球団ワーストの2割9厘という数字が、「我々らしいゲーム」ができていない実状を如実に表しているのではないだろうか。
「勝つための攻撃」、ヒントは2003年の阪神・金本の打撃に。
打てないから勝てない。それは一因としてある。だからこそ、数字に左右されない「勝つための攻撃」を徹底することだってできる。
ヒントは2003年の阪神にある。
この年の阪神も伊良部秀輝や下柳剛、金本知憲らを獲得する大補強に踏み切り、圧倒的な強さでセ・リーグを制した。
そのバックボーンとなったのが、広島からFAで移籍してきた金本の、「繋ぎの意識」だったと言われている。3番を担っていた金本は、2番の赤星憲広が出塁すると、チャンスを広げることを念頭に置いて打席に立っていた。
無死または1死のケース。1ストライクから赤星が走れば、ボール球でも強引に引っ張り併殺を避けた。2ストライクに追い込まれたとしても、赤星が盗塁を試みれば三振をしてでもアシストに徹していた。この年の金本の成績は、打率2割8分9厘、19本塁打。広島時代にトリプルスリーを成し遂げた選手の数字としては物足りない。しかし、走者を活かしたその働きは「陰のMVP」と賞賛された。