野球善哉BACK NUMBER
世代交代とは球団の顔が変わること。
小林誠司と中村奨吾、2つの戦い。
posted2015/03/19 10:35
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Takuya Sugiyama
ファンはいつまでも、自分が熱狂したころの選手をみたいものである。
あの日チームを日本一に導いた選手が、いつまでもチームにいてくれる。心のどこかにあの時の姿がフラッシュバックしている。たとえ彼らのパフォーマンスに陰りが見えたときでさえも、「あいつならやってくれるだろう」とカリスマ的に崇拝をしてしまう。
しかし現実は悲しく、年齢と共に老いは訪れ、パフォーマンスは低下する。そのためにチームは、有望な選手を獲得して新陳代謝を図ろうとする。
それがチーム作りというものだ。
もっともあってはいけないことは、チームの新陳代謝を測っていかなければいけない時期であるにもかかわらず、過去に引きずられてしまうことである。
'80年代後半から'90年代にかけて低迷していた阪神タイガースがまさにそうだった。'85年に日本一を果たしたあの熱狂から「'85年戦士」の情景をいつまでも引っ張ってしまった。レジェンドにチームを委ねるのではなく、世代交代の時期を上手く見極めなければならない。
シーズン前のこの時期、もっとも楽しみなのはいわゆる、“世代交代”が、今季どのようにして進むのか、その想像を膨らませることだ。チームの顔が変貌していく瞬間を見逃してはならない。
ロッテの“地味”な1位、中村奨吾。
「しっかりチャンスを待ちたいと思います」
そう語ったのは千葉ロッテのルーキー・中村奨吾である。
1位指名の入団ながら、注目度では2位で入団の京大生・田中英祐に負けている感のある中村だが、そうした現状を嘆くわけでもなく「僕らしくていいと思います」と静かに闘志を燃やしている。
中村は天理・早大とアマチュア野球の王道を歩んできた。一見エリートにも見えるが、内情は違う。天理高時代も、そして早大の時も、入学当時は注目選手ではなかった。