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なぜ浦和は同じ負け方を繰り返す?
最古株・鈴木啓太に見えた“壁”。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAtsushi Tokumaru/AFLO
posted2015/02/27 10:35
試合終了後、無念の表情で立ち尽くした鈴木。ペトロヴィッチ監督は「試合の内容を見れば、引き分けが妥当だ。負けたことは非常に残念」とコメントしている。
昨季最終戦と同様の場面で、鈴木投入!
2月25日 水原ワールドカップスタジアム。水原戦、鈴木はベンチスタートとなった。
0-1で折り返した試合は、56分に水原のゴールで動いた。1-1となっただけだというのに、浦和は攻め急ぎ、ボールを失ってはピンチを招いた。いったんゴールキーパーに預けて、組み立て直せば、逆転弾を狙う相手の裏を突くチャンスが生まれるだろうに、前へ前へとボールを出す。とにかく落ち着かない。
そして、63分、鈴木が青木に代わり、ピッチへ送りだされる。
同点での投入は昨年の名古屋戦と同じだった。「名古屋戦のときのことなんて、思い出すこともなかった」と試合後に話していたが、本当のことは本人にしかわからない。しかし、「落ち着いて行こう」という仕草で仲間にメッセージを送る鈴木の姿は、埼玉スタジアムとは違った。
残り時間が短いなかで得点も狙わねばならなかったことを考えれば、今回は同点でも良しという試合。浦和のDF陣もリスクを冒して攻め上がることもなかった。だから、相手の攻撃をなんとかしのぎ切った。苦しい中で攻撃のチャンスも作れた。しかし、追加点は決まらない。ならば、巧く時間を使いながら、守りきるしかない。追加点という欲を出せば、やられる危険性は高まる。
しかし、87分、自陣に近い位置でFKを与え、そこから逆点弾が生まれてしまった。
なぜまた同じ過ちを犯してしまったのか……。
試合後、鈴木は何度も「成長」という言葉を口にした。
「まだまだ成長できると思うし、成長をしていかなければならない」
それは自身のことであり、当然チームのことでもある。しかし「今日の敗戦は成長の過程として前向きにとらえていく」とは明言しなかった。
「サッカーにミスはつきもの。しかし、同じミスを繰り返してはならない」
プロとしてイヤというほど叩き込まれてきたはずの教訓を今、浦和は乗り越えられないでいる。
なぜまた同じ過ちを犯してしまったのか?
どうすればこの壁を越えられるのか?
自分はチームに何をもたらすことができるのか?
その答えはピッチのうえ、試合でしか得られないのかもしれない。