プロ野球亭日乗BACK NUMBER
長嶋茂雄名誉監督の大谷翔平論。
「やっぱりオレはピッチャーだな」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/18 11:45
大谷翔平の昨年記録は、投手としては11勝4敗、防御率2.61、打者として打率.274、10本塁打、31打点。さて、3年目の成績は?
10人を相手に無安打1四球という格の違い。
2月17日、名護。大谷のキャンプ初の対外試合登板となった、韓国プロ野球KIA戦のピッチングを見た。
この登板で大谷は初回、先頭打者を真っ直ぐ一本、4球で空振り三振に仕留めると、この回を三者連続三振でスタート。2回も中飛、空振り三振、三ゴロとあっさり3人で片付け、3回は2人を連続で空振り三振。2死から、9番打者にフルカウントからの外角ストレートがわずかに外れて四球を許したのが、唯一の走者だった。しかし最後は第1打席で三振に打ち取った1番打者が2球目を打って二ゴロに倒れ、予定だった3回を無安打で投げ終えた。
「全体的に悪くはなかったと思います」
登板後の大谷は囲み取材でこう切り出した。
「変化球もカーブとスライダーくらいでいいかなと思っていたけど、テンポも良かったので思いのほか多くの球種を投げられました」
言葉通り、フォークやチェンジアップも交えて全38球。打者10人から6三振を奪った投球内容は、格の違いを見せつけるものだった。
いつもフルスロットルでは、お話にならない。
このオフには体を一回り大きくして、投げ方もワインドアップに挑むなど、パワーアップを重視したトレーニングに積極的に取り組んできた。
ただ本人の意識としては、それは単純なパワーアップではない。全体の力の量を大きくすることで、同じ力を出しても余力を残せるようにスケールアップすることが目的だったのだという。
車のエンジンのボアアップと同じで、3000ccのエンジンでは、200kmのスピードを出すのにはレッドゾーンまで回さなければならなくても、5000ccのエンジンならば同じスピードを楽に出すことができる。
キャンプで取り組んできたワインドアップも、是が非でもその投げ方でというわけではない。より動きの大きいフォームでバランス力をつけて、球威と制球という課題を相乗的に高めようという狙いなのだ。
単純に速いボールを投げたいのではない。正確で力のある速いボールを投げる。そのためには、いつもフルスロットルではお話にならないのである。