慶応進学を疑わなかったはずが、二浪の末に早稲田へ。

　高校3年夏の大会はベスト8に終わったものの、慶応大学の後藤寿彦監督自ら仙台二高を訪れ、「私たちと一緒に慶応で野球をやろう」と誘われた。「そりゃあ、有頂天になりますよね」と江尻は当時を振り返る。だからか、「自分は慶応に行くものだ」と信じて疑わず、慶応しか受験しなかった。

　結果、2年連続で不合格。3度目の挑戦にも失敗したが、この時は「さすがに三浪したら野球を続けられない」と他の大学も併願で受験し、東京六大学では立教と早稲田に合格した。最初は仙台二高の卒業生がOB会長を務める立教に進む予定だったが、その後に早稲田の合格通知が届いたため、慶応のライバル校への進学を決意した。

　早稲田では、さほど時間を要することなく頭角を現した。

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　同い年の3年生・藤井秀悟から「フォームにリズムがない」と欠点を指摘され、その改善に努めたこともあり、1年秋の早慶戦では完封。二浪後に早稲田に入学し台頭した先輩、小宮山悟を想起させることから、江尻は「小宮山二世」と呼ばれるようになった。

　2年の春に右ひじを故障したことが響き、大学通算だと5勝6敗と成績自体は伸びなかった。それでも江尻は、後に東京六大学リーグの奪三振記録を塗り替える1学年下の和田毅の努力と急成長に触れ、「自分ももっと練習しないといけない」と精進を重ねた。通算で119回1/3を投げ防御率2.49。安定感をアピールすることができた江尻は、自らの力で日本ハムの自由獲得枠を勝ち取ったのだ。

「生意気ですよね」と回顧した入団会見での発言。

　入団会見での発言も、新たな場所を開拓したいという想いが込められていた。

「これから、どのくらい成長できるのか自分に期待しています」

　江尻は「生意気ですよね」と前置きしながら、当時の発言の意図を改めて説明する。

「まあ、優等生発言というか（笑）。でも、それって本音だったと思うんですよね。『僕の持ち味はこうです』って言うのは簡単ですけど、プロの選手を相手に投げたことなんてないわけですから、通用するかどうかなんて分かるはずないですよね。対戦して打たれたら、どうやったら抑えられるか考えて練習をする。抑えられたら、自分がそれまでやってきたことが正しかったと証明できる。プロってそういう世界じゃないですか」

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