サッカーの尻尾BACK NUMBER
「カットインのポイントはふたつある」
ロッベンが語る“必殺”のドリブル論。
posted2014/11/25 10:40
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Shin Toyofuku
アリエン・ロッベンを初めて生で見たのは、彼がPSVからチェルシーに移籍した年のことだから、今から10年ほど前になる。
小さくてひょろりとした青年は、ドリブルひとつでイングランドを席巻していた。
あの細かいステップについていけるディフェンダーはおらず、プレミアのピッチの上を生き生きと駆け回った。元気なオランダのウインガーがまたしても出てきたものだと、かの国のウイング文化に感心したものだ。
それから時が経ち、ユニフォームの色は2度かわり、彼は10歳年を重ねた。来年の1月には31歳になる。
しかし今、そのドリブルの勢いは弱まるどころか、よりスケールアップしているように見える。
「31歳というのは、普通はベテランという年だ。ただ、僕はウインガーとして今も成長を続けている。そんな実感がある」
バイエルンの練習場、ソファに深く腰掛け、ロッベンはそう言った。
キャリアのピークにいる、恐らくは世界最高のドリブラーに聞いた。ドリブルと共に歩んできた10年間。利き足とサイドの関連性。そしてグアルディオラについて。
「今考えているのは、完全に中央へいくことだ」
――今回は、ドリブルと利き足についての話を聞かせてください。10年前と比べ、あなたのドリブルに関して何か変わったことはありますか?
「今ではウインガーとしてプレーするときは、完全に右サイドに固定されるようになった。サッカーは変わっていく。10年前、もっというと15年前までは、右利きの選手は右サイドに、左利きの選手は左サイドに置くのが普通だった。
その頃までは、それぞれのポジションの選手の役割がはっきりしていたんだ。ウインガーは縦へのドリブルを仕掛ける。フォワードは中で合わせる。でも時が進むに連れて、そんなポジションの概念が薄れ、色んなことが要求されるようになっていった」
――時代の流れと共に、ロッベンという選手に求められるものも変わっていった?
「そうだね。以前は右サイドから中央へ切れ込んでシュートに持っていくプレーは、今ほど多くはなかった。より縦を意識していた時期もある。でも今考えているのは、完全に中央へいくことだ」
――チャンピオンズリーグ、オリンピコでのローマ戦(ロッベンは右サイドから2得点)の2点も、「右から中」という形で決めています。
「あれは自分らしいゴールだった。特に1点目は気に入っている。あれこそが、典型的な僕の形だから」