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復活の長友佑都、危機感の本田圭佑。
ミラノダービーで交錯した2人の現在。
posted2014/11/25 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
世界のスター選手たちが競演してきたサッカー界の殿堂サン・シーロで、日本人対決が実現した。
ミランの10番本田圭佑と、インテルの副キャプテン長友佑都。2人は、インテル側のぺナルティエリアを挟んで、逆サイドに位置する相手への意識を絶やすことはなかった。
「サイドバックで守備もする一方、前に上がったときには結果を出す。(長友は)インテルのレギュラーとして、非常に危険な選手」(本田)
「(本田は)こっちが疲れている嫌な時間帯に出てきて最悪(笑)。彼はキープ力があるし、体も強いので、あらためて敵として嫌な選手だと思った」(長友)
211回目のミラノダービーは、1-1の引き分けに終わった。
23分にFWメネズのゴールで先制したミランに、インテルは61分、MFオビのゴールで追いついた。アシストこそつかなかったが、右サイドから低いクロスを送り込んだのは長友だった。
長友「W杯後から、夢や目標が見えなくなった」
深刻な低迷状態にあったインテルは、ダービーを前に監督交代に踏み切った。6年ぶりに古巣へ復帰した指揮官マンチーニは、長友を新布陣4-3-1-2の右サイドバックとして先発起用し、存分に右サイドを攻撃しろ、と命じた。
試合の中で長友は、SBアバーテやMFデヨングを故障で欠くミラン守備陣が自陣へ下がりながらの対応に苦慮していることを看破した。ハーフタイムの間に監督やFWの2人とも話し合い、クロスを早目に入れ続けたことが同点弾を呼び込んだ。
喧噪でごった返す試合後のミックスゾーンで、長友はこれまで抱えていた葛藤について突如語り始めた。
故障や発熱に見舞われ、長友は前節ベローナ戦で復帰するまでに1カ月ほど戦線離脱した。しかし離脱の真の理由を「ワールドカップ後から自分の中で夢や目標が見えなくなった。自分のパフォーマンスが悪かったのはそのせいだとわかっていた」と告白した。
「正直、このままサッカーをやっていていいのかな、とも考えた」というほど一時はモチベーションを失っていた長友だが、故障中にゆっくりと心を整理し「今は吹っ切れた。今日の試合はずっと楽しかった」とダービーでの自分のプレーを振り返った。