野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭監督が語る森友哉の「打」。
捕手にこだわるよりも、打者として。
posted2014/11/05 10:40
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
NIKKAN SPORTS
「どうなっていましたかねぇ」
9月のある日、大阪桐蔭の西谷浩一監督と話していた時に、ふと高卒1年目ながら持ち前の打棒をいかんなく発揮しまくる同校OB・森友哉(西武)の話になった。
「例えばですけど、もし今季森がDHなどで1試合フルに使ってもらえてシーズンを戦っていたら、どうなっていたかなって考えたりするんですよ。3割、結構打ったんちゃうかなって思うんですよ。フルシーズン見てみたかったというのは、少しあります」
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当然のことながら、1人の人間が2つの人生を同時に歩むことはできない。
人生の道を決める決断は、1つに限られる。
しかし我々がつい思ってしまうのは「あのとき」、「あの選手」が「もうひとつの道」を選んでいたらどうなっていたか、という夢想だ。
菊池がアメリカに、大谷が投手一本に、そして森が……。
菊池雄星がアメリカに渡って2011、'13年サイ・ヤング賞のクレイトン・カーショーの背中をみていたら……。
大谷翔平が二刀流ではなく、投手一本に絞っていたら……。
MLBでのカーショーの勇姿をみるたび、あるいは、沢村賞の選考で、堀内恒夫委員長が「大谷が投手1本なら、沢村賞の受賞候補」とコメントしたという記事を目にするたびに、そんな彼らのもう1つの人生を想った。
森のもう1つの人生、「捕手・森」ではなく「打者・森」を第一として起用されていたなら、彼は今季、もっと驚くべき結果を残していたのではないかと、そんなことを考えてしまうのだ。
今季、開幕を2軍でスタートした森は、7月27日に1軍初昇格を果たした。同30日にプロ初出場、初安打。8月14日のオリックス戦で榊原諒からプロ初本塁打を放つと、翌15日の日本ハム戦ではメンドーサから一発、さらに翌16日の日本ハム戦でも、増井浩俊から本塁打を放った。高卒新人選手が初アーチから3試合連続で本塁打を放ったのは、46年ぶりの快挙だったが、最終的に森の出場は41試合、92打席にとどまった。