野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭監督が語る森友哉の「打」。
捕手にこだわるよりも、打者として。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/11/05 10:40
プロ1年目の成績は、92打席に立ち、80打数22安打、二塁打6、本塁打6、打点15、OPSは驚異の.945を記録した森友哉。DHであっても打席に立たせる価値はある選手だ。
大阪桐蔭の歴史上、並ぶもののないある能力。
恩師の西谷が森について想像をふくらませ、その打撃に期待を抱くのには、森のある特殊な能力に理由がある。
西谷はそれを「アジャスト能力」と表現し、彼の長所をこんな風に話している。
「目が抜群にいい。ボールをミートするという単純な意味ではない、ボールを“捉える”能力が高いんです。最後までボールをしっかり捉えて、ボールにアジャストする能力が高い。その能力だけで言ったら、うちの卒業生の中では一番です。
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中村剛也もスタイルを変えて三振が増える前の高校時代は、バットで捉えるのがとても上手い選手でした。森はそれよりも上です。レベルの高い投手でも、そこそこついていける」
森の長所というと、初球から思い切り振っていく積極性やプロでも力負けしない鋭いスイングだと思われがちだが、実は最大の長所は違うところにあったのだ。
「森には『10割打て』といいました」
そしてそれこそが筆者が、そして西谷監督が「打者・森」を推したい理由なのだ。
「森が凡打を打ったのを、ほとんど見たことがないんです。記録上の凡打はもちろんありますよ。そういう意味じゃなく、森が相手投手に本当の意味で打ち取られた、崩されて抑えられたのを見た覚えがない。凡打といっても、質が他の打者とは違うんです。
10割バッターって、打者には当然無理な目標じゃないですか。ウチの卒業生でも、誰にもそんなこと求めたことはなかったんですけど、森には『10割打て』と言いました。練習試合で5打数4安打だったら、4安打を打ったことより『なんで、もう1本打てへんかったんや』って話になりましたから。それくらい高いレベルの要求ができる選手だった」
しかし、「捕手・森」を前提に森の起用を考えた場合、どうしても、西武の正捕手「炭谷銀仁朗」という壁にぶち当たってしまう。
捕手として炭谷を超えるのは、そう容易なことではない。
森の肩の強さは申し分ないが、炭谷は今季12球団で一番の盗塁阻止率を記録している。リード面においても、投手陣からかなりの信頼を受けているし、ワンバウンドなど捕球の確実性も、炭谷が優れているところだ。