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今宮健太、高校通算62発からの変身。
「小技と守備」でSBを日本一に導くか。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/10/27 11:30
172cm、68kg。小さな体で生き残る術を求めて、スタイルを確立しつつある今宮健太。2年連続でリーグ最多の62犠打を記録した。
今宮の守備は天性の素質、バントは努力の結実。
昨年、今年と2年連続でリーグトップの犠打数を記録するほど今宮のバント技術は高い。しかし、「できて当たり前」と言われるプレーほどプレッシャーがのしかかるものだ。それでも、彼は平然とバントを決める。それを可能としているのは「準備」なのだと今宮は言っていた。
「バントがあるような場面であれば、いつも『あるだろうな』と頭の片隅に入れながら打席に立っているんで、いつサインを出されても迷うことはないですね」
華麗な守備と堅実なバント。今宮本人は、それを「自分のスタイル」だと言い切る。その信念があるからこそ、ミスをしたとしても引きずることなくプレーに徹することができるのだ。
今宮の2つの持ち味。守備は天性の素質を伸ばしたもので、バントは一から作り上げたものだった。
守備は明豊高校時代から高く評価されていた。鮮やかなフィールディングに、兼任だった投手で最速154kmを計測したように肩も強い。ドラフト1位で指名されたのはその守備があったからこそ、と断言してもいいくらいだ。
たとえエラーをしたとしても思い切って勝負したい。
今宮自身、ショートの守備へのこだわりと矜持はしっかりと認識している。
「ずっとやっていきたいポジションなんで。正直、守備に関してはエラーも多いですし、まだまだなので、もっと高みを求めて練習していきたいですけど、『いつも思い切ってプレーする』とは自分のなかで持っています。エラーってピッチャーが一番ガクって落ち込むプレーなんですけど、気持ちが萎縮したままプレーを続けてしまうとチーム全体に失礼じゃないですか。だから守備は、どんな結果になっても思い切って勝負したいです」
昨年はゴールデングラブ賞を獲得したが、今季はリーグワーストタイの15失策を記録し、CSファイナルステージ第2戦でも敗戦を招く送球ミスを犯した。それでも、周囲が今宮の守備を認めているのは、彼が「攻めの守備」を貫いているからなのだろう。