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「今のベストを出した上で負けた」
本田とミラン、熟成度でユーベに完敗。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/09/21 15:30
イタリア代表でもセンターバックを務めるキエッリーニと競り合う本田。試合後「対策を練られていた、と思います」とコメントした。
本田のシュートが、ユーベの選手に火をつけた。
MFムンタリが中盤から放った縦へのクロスに、ミランの10番は流れるように頭を合わせた。
ボールが入った方向はちがえど、パルマ戦のヘディングゴールを彷彿とさせる鮮やかな動きだった。間一髪、GKブッフォンが右手一本で弾いていなければ、貴重な先制点になっていただろう。
本田のシュートに触発されたのか、その後、ユーベは猛攻に出た。
31分にFWジョレンテが、34分にペレイラが続けて惜しいシュートを放った。38分には、MFマルキージオのミドルシュートが右ポストを直撃した。
歴史ある名門クラブ同士の引き締まった展開ながら、3連覇王者は、ひたひたとミランのゴールに迫った。
後半に入ると、MFムンタリがブレーキとなり、ミランの中盤は王者相手に綻びを見せ始めた。
3トップの運動量が落ちたわけではなかった。
ただし、故障明けのエルシャーラウィにラツィオ戦での切れはなく、カセレスの代わりに入ったDFオグボンナに押さえ込まれた。メネズも“偽9番”の範疇を越えて、ポジションを下げていた。
その分、本田はセンターフォワードのように前へ詰めていたが、ボールは届かない。インザーギがテベス対策を練っていたように、敵将アッレグリも、得点とアシストを重ねていた本田を放っておくはずがなかった。
ミランの10番が中盤でボールを受けるたび、横から、背後から、体躯で上回るキエッリーニによる執拗なマークに遭った。パスを出そうとしても、高さと絶妙のポジショニングで、キエッリーニは文字通り壁となって立ちはだかった。
インザーギが、ついに切り札のトーレスを投入!
71分、集中力をもって守っていたセンターバック2人が破られた。MFポグバのスルーパスに合わせたテベスが、低く右足一閃。ゴール右隅へ、にくいほど冷静に決めた。
ユーベが誇る、もう一人のワールドクラスMFポグバへのケアが不足していた、と言うのは容易い。現状のミランにそこまでの余力はなかったのだ。
31分、インザーギは、背番号9を受け継がせたFWトーレスを投入した。