甲子園の風BACK NUMBER
8年連続甲子園出場の聖光学院。
荒療治で甦った「ダメなチーム」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2014/08/06 10:30
聖光学院の夏の成績は、2008年、2010年のベスト8が過去最高。ダルビッシュ、菊池雄星も果たせなかった東北勢初の優勝に挑む。
「最後の夏に間に合ってくれてよかった」
大会全体を振り返れば、聖光学院の強さは盤石といえるものだった。
初戦の岩瀬農戦で、大会タイ記録となる7者連続安打を含む26安打27得点で大勝するなど、決勝までの5試合中3試合でコールド勝ち。守っても準決勝まで無失点と、絶対王者としての戦いぶりだけが目立っていた。
だが、指揮官はそれを否定するように今年のチームをこう表現する。
「最初は本当にダメなチームでした。僕自身、『これは鍛え上げるのに時間がかかるだろうな』と思っていたし、実際にそうなった。それでも選手たちのなかで、『自分たちができることをコツコツやろう。支えてくれた人たちに恩返しをするんだ』という気持ちが徐々に芽生えてきて、最後の夏にようやく形にしてくれた。間に合ってくれてよかった」
県内95連勝が止まった昨年の秋。
'08年の夏から県内95連勝。「1強」と呼ばれ続けた聖光学院に試練が訪れたのは前年の秋。引導を渡したのは、日大東北の大和田だった。
秋季大会準決勝。日大東北との対戦を前にし、斎藤監督は「負けを覚悟していた」という。
大和田の最速は145km。「このチームは剛腕を打った経験がない」というのが大きな理由ではあるが、事実「聖光を倒すために日高に入った」と闘志を燃やす大和田の前に打線が沈黙し、1-5で敗退。県の連勝記録を更新し続けた無敵艦隊は、5年の時を経て沈んだ。
斎藤監督はこの時、敗戦の事実を正面から受け止め、ひとつとして言い訳を漏らさなかった。
「個人的に連勝記録を励みにしていた部分はありましたけど、毎年選手は代わるわけですからそこまで悲観はしていません。僕としては、連勝という十字架を選手たちに背負わせているつもりはありませんでしたけど、負けてすっきりしたと言いますか、いい仕切り直しになればいいと思っています。子供たちの今後のため、進化の過程としてこの敗戦が生きてくれればいいんですが」
しかし指揮官の期待も虚しく、選手たちは敗戦を引きずった。
3位決定戦で勝利し、東北大会へ駒を進めたものの初戦で盛岡大付にサヨナラ負け。6季連続での甲子園出場も絶たれた。