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香川真司よ、悔しさをぶつけろ!
4年前、大久保嘉人がかけた言葉。
posted2014/06/22 11:50
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
失意のスコアレスドローに終わったギリシャ戦後の取材エリア。
最後の最後に香川真司が現れると、彼のもとに多くのメディアが集まった。大事な試合で、誰もが予期しなかったスタメン落ち。筆者としても彼の今の心境を、どうしても耳に入れておきたかった。
どんな思いで後半、ピッチに入ったのか。これまでの戦いについて、自分のパフォーマンスについてどう思っているのか。
メディア側の矢継ぎ早の問いに、香川はうつむき加減ながら落ち着いた口調で言った。
「0-0だったので、(考えたのは)点を取ることだけでした。もちろん、こんな結果は望んでいませんし、ただ、これがワールドカップという厳しい舞台。僕たちは次に勝つだけです」
感情は読み取れない。だが、話す際に時折見せる彼の鋭い眼差しを目にしてしまうと、何かの感情を内に秘めているようにも思えた。結果を出せない悔しさ、自分自身に対する歯がゆさなのか……。
「戦術的な観点に立って」先発を外されて……。
試合前、昼間の晴天から一転して雨となったナタールのエスタディオ・ダス・ドゥーナス。
10番を背負う男は、ベンチから戦況を見守った。定位置だった左サイドハーフには、右から岡崎慎司が回り、右には大久保嘉人が入った。アルベルト・ザッケローニは香川を外した意図をこう説明している。
「あくまで戦術的なチョイスだ。我々はサイドで攻撃を仕掛ける必要性があった。相手のサイドを疲れさせる必要性があった。サイドで攻撃を仕掛けることで相手の守備陣を広げる狙いがあった。香川がサイドアタッカーというのは事実。しかし彼は中に入っていく傾向がある。相手の守備陣を広げさせるという戦術的な観点に立って判断したものだ」
サイド攻略がチームの狙いだった。センターバックの今野泰幸が左サイドでボールを持って上がり、長友佑都を押し上げつつサイドハーフから下りてくる岡崎にボールを当てて裏を取ろうとする。ボランチも絡んで数的優位をつくりながら攻略し、左サイドからシュートシーンに持ち込む。左サイドで課せられた役割を忠実に果たそうとした岡崎のプレーを見れば、確かに香川を外した理由が分からなくもない。
しかしながら一方で、もし香川が絶好調であれば決して外れることはなかったようにも感じてならない。