香川らしい躍動感、キレはどこへ消えたのか？

　初戦のコートジボワール戦では、高い位置を取ってきた相手の右サイドバック、セルジュ・オーリエの対応に追われるなど、香川は攻撃での持ち味を封じられてしまった。シュートはゼロ。そして結果的に自身のサイドを攻略されて2点を失っている。疲労も理由にあるのか、守備のパワーを持続できなかった。

　だが、それ以上に気になったのはボールを持ったときのいつもの香川らしい躍動感、キレがなかったことだった。

チャンスメークだけで、シュート無し？

　ギリシャ戦で香川に出番が回ってきたのは、後半12分。大迫勇也に代わって投入され、定位置の左サイドに入った。

　ギリシャはボランチのコンスタンティノス・カツォラニスが退場して一人少ない状況。やるべきことはただ一つ、本人も言うように点を奪うことであった。ベタ引きのギリシャの堅牢をこじ開けるミッションを、香川は託された。

　長友、本田圭佑との連係でゴールに迫っていくシーンはあった。後半23分には右サイドの裏を通すパスで内田篤人に渡し、大久保嘉人のシュートにつなげている。38分にも香川のパスを本田がスルーして、内田がクロスを送っている。チャンスメーカーとしての働きが多かったが、アジリティーを苦手にしているように映るギリシャの最終ラインを見るにつけ、香川自身がフィニッシャーとしてペナルティーエリア付近で強引にゴールに迫る部分があっても良かった。そしてこの日もシュートはゼロに終わった。

「相手が引いたからスペースがなかった。でも、決めるチャンスはあったんじゃないかなと思います」

　彼はそう言い残して、取材エリアを離れた。

“兄貴分”の大久保が香川にかけた言葉とは。

　香川真司が誰よりも負けず嫌いな男であることは、チームの皆が知っている。

　コートジボワール戦の翌日。コンディション調整のメニューの一つでもある交代浴（湯風呂と水風呂を交互に入る）の際、セレッソ大阪時代からの先輩で“兄貴分”の大久保から「全然ダメやったけど、まあ落ち込むな」とダメ出しされたうえでハッパをかけられたという。沈んでいた表情に笑みが浮かんだというから、香川にしてみれば救われた思いがあったのだろう。

　このとき、筆者は以前、大久保から聞いたエピソードを思い出していた。

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