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CL決勝はレアルの劇的な逆転勝利!
120分の激闘で掴んだ10度目の栄冠。
posted2014/05/25 12:00
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
REUTERS/AFLO
試合後の記者会見場ではアンチェロッティが真面目な顔で、つい先ほど終わった熱戦を振り返っていた。
遠くから歌声が聞こえてくる。声は次第に大きくなっていき、突然会見場のドアが開き、マルセロの陽気な笑顔が現れた。
セルヒオ・ラモスとペペがそれに続いて入ってくる。イスコにケディラ、普段は大人しいモドリッチまでが小躍りしながら、壇上のアンチェロッティの下へ近づいていった。
セルヒオ・ラモスがふりまいたペットボトルの水しぶきが舞う。そんな選手たちを見るアンチェロッティは嬉しそうだ。
「マドリーは優勝に値した。“デシマ”が、クラブの最大の目標だった」
5月24日、アトレティコ・マドリーを4-1で破って得たクラブ10個目のチャンピオンズリーグのタイトルについて、指揮官はこう語った。
セルヒオ・ラモスはそんな彼の頭にキスをし、会見場を後にする。そして陽気な音楽隊は歌声とともに、また別の部屋へと進んでいくのだった。
後半ロスタイムまではアトレティコの試合だった。
途中までは完全にアトレティコの試合だった。後半ロスタイムまで、と言っていいだろう。
アトレティコは得意のセットプレーから再三チャンスを作り、リーガ優勝を決めた最終節のバルサ戦と同じように、36分にCKからゴディンが決め先制した。
そこからは、シメオネが築いた統制された守備組織でマドリーを封じ込めた。開始早々にジエゴ・コスタが負傷退場するマイナスはあったものの、プランは完璧に機能していた。
マドリーもベイルが再三チャンスを手にしていた。終盤はマドリーの一方的な展開でもあった。しかしそんな中1点差で粘り勝つのも、今季のアトレティコの強みだ。リーガ優勝を引き寄せたのも、シーズンを通してみせたしぶとさにあった。
後半ロスタイム、セルヒオ・ラモスのヘディングが決まるまで、アトレティコのシーズンは絵に描いたように上手く進んでいた。