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CL決勝はレアルの劇的な逆転勝利!
120分の激闘で掴んだ10度目の栄冠。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/05/25 12:00
今季1億ユーロ(約139億円)でトッテナムから移籍したベイル(上)。CL決勝でまさに値千金の決勝ゴールを決めた。
「あと少し、足りなかった」とシメオネ。
「今季は10点満点で言うと、9.5点だな。あと少し、足りなかった」とシメオネは苦笑いした。
GKのクルトワは「あと1分だったのに」と今も悔やんでいる。
主将のガビはあの同点弾を「悲劇だ」と嘆いた。
セルヒオ・ラモスのヘディングは、試合の流れを完全に変えた。
マドリーは劇的な得点に士気を高め、アトレティコはどこか萎縮した。フィリペ・ルイスは交代せざるを得ず、フアンフランもほとんど走れなくなっていた。そんなアトレティコ守備陣の間を、延長後半5分、左からディマリアが切り裂くように突進していく。シュートはクルトワに当たり、反対側のベイルの頭上へ舞い上がった。
アトレティコにもう、余力は残されていなかった。
スコアは2-1、残り10分。
シーズンを120%の力で走り抜けたアトレティコにもう余力は残されていなかった。
ガビは言う。
「1年間、チームは獣のように戦い続けたんだ。僕らは走れるところまで走った」
シメオネのアトレティコは走り、ぶつかり、戦うチームだった。1試合1試合戦っていくという方針から、先発は固定。マドリーのように、ベンチに数十億円の選手が座っているわけでもない。「いつか切れる」と多くの人が考えたが、そんな懐疑的な声にも、選手は走り続け、2強以外不可能と言われたリーガで優勝する。
しかし走り続けたチームは試合終了目前の同点弾とベイルの勝ち越し点で、何かが切れたように力つきた。
走れないアトレティコを見たのは、今季でこれが初めてだった。