Jをめぐる冒険BACK NUMBER
さらなる進化を目指すゆえの苦境。
柿谷曜一朗が挑む困難なミッション。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byShigeki Yamamoto
posted2014/04/23 12:00
セレッソの8番を背負い、ACLとの過密日程を戦う柿谷曜一朗。昨年は代表の1トップとしても存在感を示しW杯メンバーへの選出も濃厚と見られているが、本人はセレッソへの最大の愛情を隠さない。
味の素スタジアムに4万人を集めた4月19日のFC東京vs.セレッソ大阪戦。試合後のミックスゾーンに姿を現した柿谷曜一朗は、待ち受ける大勢の記者を見て、「うわ、多いな……」と呟いた。
どんな選手でも、うまくいってないときは、あまりしゃべりたくないものだ。「今日は勘弁してください」と言って立ち去る選手もいるが、彼は記者の前へと歩み出た。
最初の質問が投げ掛けられたのは、10秒以上の沈黙が続いたあとだった。
「連戦が続いていて、コンディション的にはどうな――」
最後まで聞かないで、彼は答えた。
「いいですね、凄く。はい」
続いて「6試合勝ててないけど、なぜ、うまく行ってないんだろう?」という質問が投げ掛けられると、表情をほとんど変えずに、こう言った。
「それが分かっていたら、6試合も勝てないことはないと思うので。こういうときもあると思いますし、気にしていても、この6試合は帰ってこない。次に向けて準備するだけだと思っています」
ACLへの挑戦がセレッソから奪う体力と時間。
FC東京に0-2で敗れたセレッソは、これで公式戦6試合未勝利。柿谷自身も今シーズン、ACLでは3ゴールを奪ったが、リーグ戦ではまだゴールを記録していない。
チームが足踏みを続けているのは、やはり、ACL参戦による疲労の蓄積と無関係ではないだろう。FC東京戦も8日間で3試合目のゲーム。ポポヴィッチ監督は「言い訳が通用しないのは分かっている」としたうえで、「疲労が蓄積しているのは間違いない。体のキレがないことでフィニッシュの精度が低下している」と嘆く。
加えて、就任したばかりの新監督のスタイルを、チームがまだ消化し切れていない点も挙げられる。
リーグ戦と並行してACLを戦う今シーズンは、試合間隔が中3日や4日のことが多い。そのうち1日は移動に費やされ、疲労回復も視野に入れなければならないから、戦術トレーニングに費やす時間がなかなか取れないでいる。