周りを生かし、自分も輝くという困難なミッション。

　ストライカーとしての柿谷の魅力が、裏に抜け出るスピードや後方からのボール処理のうまさ、コース取りの的確さやシュートの正確さにあるなら、プレーヤーとしての魅力はまさに「なんでも出来ること」だろう。

　トップでも、トップ下でも、サイドでもプレーでき、ドリブルも、パスも、フィニッシュもできる。

　裏に抜け出してフィニッシュまで持ち込めるのが彼の武器なのは間違いないが、それは一側面に過ぎない。これまでのゴールシーンを振り返れば、ヘディングでも、ミドルからでもゴールを奪い、今シーズンのガンバ大阪戦ではスルーパスからフォルランの得点をお膳立てしている。チャンスメイクもお手のものなのだ。

　コンビネーションを重視するポポヴィッチ監督が柿谷に新たな役割を託したのか、あるいは、柿谷自身がチームのために何役もこなす役目を買って出たのか……。いずれにしても柿谷がフォルランをはじめとした周りの選手たちを生かし、その上で自分も輝くという、決して簡単ではないミッションに今、挑戦しているのは間違いない。

背番号「8」の真価は、苦境でこそ問われる。

　柿谷は昨シーズン、セレッソにとって特別な番号である「8」を受け継ぐことに対し、「結果を出せなかったら文句を言われるだろうし、批判はすべて僕に来る。その中で成長できると思った」と語っている。

　昨シーズン、チームは4位になってACL出場権を獲得。自身も21ゴールを奪う活躍で期待に応えたが、新監督を迎えチームが転換期を迎えた今、1年前に予想していた重圧や困難が改めて柿谷に押し寄せているようだ。

　昨年7月に日本代表に選ばれてから世間の注目度が急激に増し、セレッソでのプレーに集中したくても、ワールドカップのメンバー発表が間近に迫った今は、代表の話を振られることも多い。ましてやチームも自身も思うような結果を出せていない。

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