欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「マヤは典型的な日本人タイプ(笑)」
VVV会長が語る吉田麻也と日本愛。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2014/04/18 10:30
2009年から2012年までVVVに在籍した吉田麻也。残留争い、ロンドン五輪などを経験してサウサンプトンへ移籍した吉田を、ベルデン会長は誇りに思っているという。
藤田俊哉氏をコーチに迎えた決断と覚悟。
――本田、吉田両選手に加え、会長はカレン・ロバート選手や大津祐樹選手と、これまで複数の日本人選手を獲得してきました。さらに今度は欧州で監督を目指す藤田俊哉氏をコーチとしてクラブに迎え入れました。欧州で日本人が指導者になるということは、選手として挑戦する以上に高いハードルがあると思いますが。
「おっしゃるとおりです。監督になることは、本当に難しいチャレンジかもしれません。選手は自分のプレーに集中して、ベストパフォーマンスを出すことに尽力すればいいものです。ただ監督やコーチは、まずチームに在籍する20数人の選手たちをしっかりオーガナイズしていかなければなりません。結果も出していかなければならない。
それと同時に、クラブを支えているスポンサー陣へのケアも時には必要です。選手と違って、全体を組織立てていかないといけない立場なので、これは難しい仕事です。ただフジタは日本、オランダでプレーした経験を持ち、選手としても人間としても非常に賢い人物です。彼はコミュニケーション能力も抜群なので、きっとこの挑戦に成功してくれると信じています。もちろん我々も彼に今後さらなるサポートができるようにしていきたいです」
日本を愛するようになった30年前の出来事。
――最後に、これまでもいろいろな方から会長は日本を愛しているという話を伺ってきましたが、あらためて直接お聞きしたいと思います。なぜ、それほどまでに日本とのつながりを大切にしているのでしょうか?
「ただただ、日本が好きなのです(笑)。私は国際物流の会社を経営していますが、1986年から日本の企業との取引が始まりました。私は『世界中でどこの国との取引を盛んにするべきだろうか』と考えていました。日本は当時、世界でアメリカに次いで世界第2位の経済大国でしたので、日本にはチャンスがあると思いました。また東京はアムステルダムに比べて約15倍の経済規模を誇る都市でもあります。
約30年前、私は初めて東京に来ました。ある時、強い雨が降っていたので私は駅で雨宿りをしていました。すると、知らない女性が近づいてきまして、傘をさして一緒にホテルまで送ってくれたのです。そして彼女は何も言わずに笑顔でそのまま帰っていきました。その時の好印象が、私の心の中にずっと残っています。『なんて素晴らしい国なんだ。こんなにホスピタリティに溢れていて親切な人々はいない』と思ったのです。その時の経験が、私の人生を変えました。だから私はずっと日本との関係を築いていこうと心に決めたのです。
サッカーでのつながりは、我々のファミリーでもあるセフ・フェルフォーセン(元VVV監督)が名古屋グランパスを指揮した時代から始まりました。セフとは日本人のサッカー選手についてさまざまな意見交換をしましたし、その中でホンダとの出会いがありました。
サッカーでもビジネスでも、日本とのリレーションシップは本当に大切なもの。これは、私にとってはスペシャルな関係なのです」