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本田に対するテベスの反応に見る、
セリエA特有の「ドリブル対応能力」。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2014/03/14 11:00
3月2日に行なわれたACミラン対ユベントス戦。本田圭佑は後半26分からボランチとして出場したが、精彩を欠くプレーが見られるなど、存在感を見せることは出来なかった。チームも0-2で敗北した。
「受け身のディフェンス」と「攻撃的なディフェンス」。
レナトが左サイドをドリブルで駆け上がって1度ストップしたとき、森崎和幸はバランスを崩したこともあって、相手の目の前で背中を丸めて腰を落としてしまった。レナトはその瞬間を見逃さずに加速し、森崎を振り切って中央へ折り返しのパス。その流れから小林悠の得点が決まった。
「ディフェンス側はどうしても受け身になり、下がりながらの対応が多くなります。その時に、腰が落ちすぎて、背中を丸めた前かがみに見える選手が多いのです。その体勢では一定以上の速さと技術を持った選手には対応できません。詳しい説明は長くなるのでエッセンスだけ言うと、股関節を上下に使うこと、常に一定の高さを保ちアイドリング状態を維持できること、相手の動きに対して重心を傾けることで対応できること、これが最低限必要な体の使い方です」
テベスの話に戻ろう。
西本はテベスの守備が「受け身のディフェンス」ではなく、「攻撃的なディフェンス」であることを称えた。
「相手にアプローチするとき、しっかりと首を振ってまわりを確認していました。そして勢いに乗ってドーンと突っ込んでしまうのではなく、スススと寄って相手からちょうどいい距離を取り、相手が動いた瞬間に反応して取りに行く。ボールを奪うための守備であり、まさに攻撃的なディフェンスです」
長友佑都も体現する、セリエAの守備に慣れる。
セリエAのDFたちは他のリーグに比べて、ドリブラーに対してすっと体を寄せて奪うのがうまい印象がある。長友佑都もそのひとりだ。
全員がテベスのような高次元の身のこなしをしているわけではないが、イタリアの守備レベルが高いのは、守備における姿勢と、それによってもたらされる出足の速さも関係しているのではないだろうか。セードルフ監督やカカが「セリエAに慣れるのは時間がかかる」と口を揃えるのも、感覚的にこの違いを捉えているからに違いない。
とはいえ、どんな豪速球でも繰り返し見ていれば目が慣れるように、こういう間合いもいつか当たり前に感じられるようになるはずだ。相手が1歩目で体を寄せてくることが予測できれば、それに応じてうまく体(背中や骨盤)を使えるようになればいい。
本田がセリエAの守備レベルの高さをどう克服していくのか。相手の体の使い方とともに注目したい。