フットボール“新語録”BACK NUMBER
本田に対するテベスの反応に見る、
セリエA特有の「ドリブル対応能力」。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2014/03/14 11:00
3月2日に行なわれたACミラン対ユベントス戦。本田圭佑は後半26分からボランチとして出場したが、精彩を欠くプレーが見られるなど、存在感を見せることは出来なかった。チームも0-2で敗北した。
「私が注目したのはテベス選手の守備時の姿勢です。 骨盤が立っていて、背中が自然に伸びているので、 股関節の自由度が増える。だから素早く1歩目を 踏み出せるんです」
西本直(トレーニングコーチ)
日本とアルゼンチンが誇るモンスターの衝突だった。
3月2日、ACミラン対ユベントス戦の後半80分――。
ショートコーナーの流れから、右コーナー付近で本田圭佑とテベスが対峙した。本田がボールを拾ってドリブルを始めると、テベスがまわりを確認しながら近づいて来る。身長こそ本田の方が9cm高いが、体重はテベスの方が1kg重い。ともにパワーを武器にしているだけに、ただで終わるはずがなかった。
予想通り、迫力溢れるシーンが生まれる。
本田が左にドリブルで抜け出そうとすると、テベスが一気に距離を縮めて、押し合いながら併走する形になった。テベスが一瞬早く左腕を前方に入れて抜け出し、本田が後ろから抱え込む。結局、本田のファールになった。それでも2人はボールを追うのをやめない。流れの中から生まれた、背番号10同士の、重量級の意地の張り合いだった。
この場面の鍵は、フィジカルの強さではない?
ともに今季加入した選手だが(テベスは昨夏、本田は今年1月)、やはりセリエAはフィジカルの強さが求められる……と強く感じさせられるシーンだった。
ただし、この場面について、まったく別の見方をしている人物がいた。「体の使い方・動き方」の分析に定評があるトレーナーの西本直だ。
今年1月、Number Webで西本トレーナーの「大迫勇也のボールキープにおける体の使い方」の分析を紹介したところ大きな反響があった。オランダ代表のデヨングの圧力に対して、人体で最も大きな筋肉がある背中をうまく使って競り勝っている、というシーンだ。
西本はアスリートの動きを「股関節と肩甲骨のつながり」や「背中(広背筋)の使い方」という視点で捉えており、これまでのサッカー界にはなかった視点である。