「今日は、チャンスはあるんじゃないかと思っていた」

　香川自身も、試合後にこう話している。

「CLのほうがより、スペースがあって、自分の良さが活きるという部分がある」

　だから、“今回の試合”には期するものがあったのでは、と問うと、すぐに香川真司はこう切り返した。

「ありましたね。今日はたぶん、チャンスはあるんじゃないかなと思っていたし。ただ、そこで結果を残せない。悔しいけど……」

　オリンピアコスとマンチェスター・ユナイテッド。選手の質、経験値を比べればユナイテッドが大きく上回っている。

　しかし、国内リーグの優勝争いでトップに立つオリンピアコスの選手たちには、チームの状態が良いという確かな手ごたえがあった。

「ここまでの僕らは組織的で良いサッカーが出来ている」

　センターバックのマノラスも、そう話していた。

　彼らには確固たる自信があったのだ。それは、プレミアリーグで苦しむユナイテッドの選手たちが欠いているものだ。

後半15分、香川はウェルベックとともにピッチへ。

　ギリシャのピレウスで行なわれたこの試合では、その自信の差が試合に色濃く反映されることになった。ユナイテッドが相手を上回っていたのは、ボール支配率と獲得したコーナーキックの数くらい。サイドからの攻撃は機能せず、4-2-3-1のフォーメーションを崩すこともなく、選手たちが自らのポジションを離れてアクションを起こすこともない。攻撃は明らかに停滞していた。

　前半38分にはオリンピアコスのマニアティスが放ったシュートを、ゴール正面にいたドミンゲスが軽く触ってコースを変える。これがゴール左隅へ飛び、オリンピアコスに先制点が生まれた。

　その後も彼らの優位は変わらず、後半10分にはキャンベルがボールを左に押し出して、一人かわすと、豪快なミドルシュートを突き刺して、スコアは2－0となった。直後に香川とウェルベックがウォーミングアップを命じられる。

　そして後半15分。2人は、クレバリーとバレンシアに代わってピッチに立った。香川に与えられたのはトップ下のポジション。それまでトップ下を務めていたルーニーが一つポジションを下げることで、より攻撃的な選手を増やして反撃に出ていく。

【次ページ】　香川のスタイルを理解する、キャリックの存在。