欧州サムライ戦記BACK NUMBER
香川真司、CL7戦で6出場の理由。
現地記者、チームメイトの信頼の声。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2014/02/26 12:20
ポゼッション率では上回ったものの、相手シュート数が12なのに対して、マンUはわずか6という……攻撃陣の活性化を託される香川への期待は大きい。
「よしよし」とでも言うように香川の頭を撫でたエブラ。
「もちろん、点は狙っていました」
香川はそのように語った上で、こう続けた。
「ただやっぱり、まずはリズムを作れば、そういう決める選手がたくさんいるということはわかっていることなので。そういうのを意識してやりました」
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交代直後こそチームの攻撃に絡めなかったが、後半22分のキャリックとのパス交換を機に状況は変わっていった。香川が下がれば、代わりに中盤の底にいたルーニーが上がっていく。香川が左に流れれば、左サイドのMFであるウェルベックが中に入っていく。それまではほとんど見られなかったポジションチェンジが行なわれるようになったことで、攻撃にはリズムが生まれていった。
後半31分にキャリックからのボールを受けた香川は、自らの左側をオーバーラップしていったエブラにパスを出す。エブラの突破は阻まれてしまったが、そのあとにエブラは香川の頭を撫でている。「よしよし」とでも言うように。
最大のチャンス、サイドへのスルーパス、そして鼓舞。
後半37分に香川は中央でボールを受けると、右サイドへスルーパスを出した。走り込んでいたスモーリングがこれを受けて、クロスを送る。ゴール前で待ち構えていたファンペルシが、トラップからのシュートを放った。このボールは浮いてしまいクロスバーの上へと飛んで行ったが、この試合のユナイテッドにとって最大のチャンスだった。
後半ロスタイムには、ルーニーとのパス交換から中央で相手をひきつけて、左ななめ前方にスルーパス。エブラが勢いよく飛び出していき、サイドをえぐってフリーでクロスを送った。それもゴール前で相手ディフェンダーにはばまれてしまったのだが……。
積極的にボールに触れていったことで、チームの攻撃だけではなく、香川自身の気持ちにも変化が生まれたように見えた。それまで自信がなさそうにプレーしていた香川は、ピッチに立ってから13分がたったとき、それまでとは見違えるようなアクションを見せた。
大きく両手を叩き、2点をリードされて気落ちしたチームメイトたちを激しく鼓舞している。まるでリーダーであるかのように。
しかしそこまでしても、ユナイテッドがオリンピアコスのゴールをおびやかすことはできず、0-2のまま試合終了のホイッスルが鳴った。2点のビハインドを背負って、ホームでの2ndレグを迎えることになった。