欧州サムライ戦記BACK NUMBER
徐々に効いてくる「10番」の重圧。
本田圭佑よ、フリーキックを譲れ!
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2014/01/26 08:15
本拠地サンシーロでのデビュー戦で、ゴールからやや左寄りの位置のFKでも、本田はキッカーを譲らなかった。
想像をはるかに超える、背番号10の重圧。
アッレグリは、ズラタン・イブラヒモビッチやロナウジーニョ、アンドレア・ピルロやクラレンス・セードルフにも同じ態度で接し、笑顔で肩を叩きながらコミュニケーションを取っていた。当時期待の新人として注目されたアレクサンダー・メルケル(現ワトフォード)にもそう。その姿を見て、選手のコントロールとマネジメントに秀でた指揮官であると感じ、その年、7シーズンぶりにスクデットを獲得したミランの強さに納得した。
そして世界屈指の名門クラブにおいて、本田が与えられた「背番号10」の影響力は、おそらくそれを背負ったことのない人の想像よりもはるかに大きい。
クラブにとって、戦略的に使うこともできる背番号。
偉大な先人によって作り上げられたその価値は、確かにミランでも受け継がれてきた。ルート・フリット、デヤン・サビチェビッチ、ズボニミール・ボバン、マヌエル・ルイ・コスタ、クラレンス・セードルフはその継承者であり、名前を並べるだけでもクラブの歴史と重みが伝わってくる。
この伝統が本田に受け継がれたことは、もちろんケビン・プリンス・ボアテンクがタイミング良くチームを去ったことと大きく関係している。もし移籍がシーズン開幕前に成立していたら状況は変わっていたかもしれない。
ロビーニョはレアル・マドリー時代に「10」を背負っているし、カカは「22」、モントリーボは「18」にそれぞれ特別な愛着があるとはいえ10を託されても不思議ではない。バロテッリに与えて責任感を持たせる使い方もあるし、クラブとしての期待感を示すためにエルシャーラウィやクリスタンテら有望株に託すこともできる。背番号10はクラブからの絶対的な評価を意味するから、そのユニフォームを提示されて気分を害する者はいない。だから選手のモチベーションを飛躍的に高めるという意味で、ナンバー10を戦略的に使うこともできる。