欧州サムライ戦記BACK NUMBER
徐々に効いてくる「10番」の重圧。
本田圭佑よ、フリーキックを譲れ!
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2014/01/26 08:15
本拠地サンシーロでのデビュー戦で、ゴールからやや左寄りの位置のFKでも、本田はキッカーを譲らなかった。
しばらくはプレースキッカーを控えてもいいのではないか。
本田はこれまで、自らの武器であるプレースキックで未来を切り開いてきた。
2009-'10シーズンのチャンピオンズリーグ・セビージャ戦もしかり、南アフリカW杯のデンマーク戦もしかり。その決定力はすでに世界的な認知を得ているから、ミランのチームメートもプレースキッカーの座を譲っているのだろう。
だからこそ、結果を焦らず、コンディションが万全に整うまでプレースキックのキッカーを控えてもいいのではないか。それが個人的な意見である。ピッチ内のパワーバランスを崩すリスクを冒す必要はないし、幸いにして、セードルフは4-2-3-1システムを用いて攻撃的なサッカーを志向し、“本田仕様”と言ってもいい新体制を作ろうとしている。
セードルフが4-2-3-1を選択して本田をトップ下に据える限り、あるいはモントリーボやカカ、ロビーニョやバロテッリとの信頼関係さえ崩れなければ、その真価を証明するための見せ場はいくらでも作れる。
苦境に追い込まれたミランに求められるのは、体制初期のアッレグリが実現した、強烈な個を有機的に機能させるチームである。セードルフはその大役を預かり、おそらく本田を中心に据えようとしている。ファンも救世主として期待している。
落ちてもミランはミラン。世界屈指のビッグクラブだ。ミランの復活は本田の成功とイコールであるから、「ミランの10番」の先に見据える道を一気にこじ開けるためにも、CSKAモスクワの本田とも日本代表の本田とも違う“ビッグクラブ仕様”へと進化しなければならない。今のコンディションなら、そのために必要なのは、リスクを負ったプレースキックではない。